実用新案
1. 実用新案の定義
実用新案とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」のうち「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」でなければならない(実1条)。
「高度なもの」である必要はない。
方法・化合物は、実用新案法の保護対象にはならない。
特許と同じ点が多いが、実用新案はライフサイクルの短い商品の早期権利化を目的とされる。
「きわめて容易に考案することができたもの」は、新規性を持たないものと判断され、実用新案登録を受けることができない(実3条2項)。
⇔特許法では「容易に考案することができたもの」が、新規性を持たないものと判断される。
2. 実用新案登録出願に必要な書面 (実5条)
(1) 願書
(2) 明細書
「考案の名称」「図面の簡単な説明」「考案の詳細な説明」を記載する。
(3) 実用新案登録請求の範囲
「実用新案を受けようとする考案を特定するために必要と認める事項」のすべてを、請求項に区分して記載しなければならない。
複数の請求項を設け、複数の考案を記載することができるが、「単一性」を満たさなければならない(実6条)。
(4) 図面
実用新案登録出願においては、図面は必ず提出しなくてはならない。
(5) 要約書
3. 審査
(1) 方式要件の審査(実2条2 4項)
出願が規定された方式にのっとっているか、所定の手数料を払っているかを審査する。
(2) 基礎的要件の審査(実6条2)
次に該当するときは特許庁長官が補正をすべきことを命ずる。
考案が物品の形状、構造又は組合せに係るものでないとき
実用新案登録をすることができないものであるとき(公序良俗違反)
規定する要件を満たしていないとき(記載要件の違反・単一性の違反)
明細書等の補正は、出願から1カ月以内・補正命令後の相当の期間内に限られる。
※ 「進歩性」「先行願」等の実体的要件の審査は行われない。
4. 実用新案権の設定の登録
放棄され、取り下げられ、又は却下された場合を除き、実用新案権の設定の登録がなされる(実14条)。
登録があったときは、考案者・権利者・考案の内容等が実用新案公報に掲載される。
実用新案権の存続期間は、実用新案登録出願の日から十年をもって終了する(実15条)。
5. 実用新案登録請求の範囲の訂正 (実14条2)
訂正をするには、訂正書を提出しなければならない。
(1) 願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正を一回に限りすることができる。
期間の制限:実用新案技術評価書の謄本の送達があつた日から二月を経過したとき、他
目的
一 実用新案登録請求の範囲の減縮
二 誤記の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
(2) (1)のほか、請求項の削除を目的とするものに限り、願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正をすることができる。
6. 実用新案技術評価書
特許庁長官は、審査官に「実用新案技術評価書」を作成させなければならない(実12条)。
実用新案権の有効性に関する客観的な判断材料であって、権利の効力を作用するものではない。
実用新案技術評価書は、何人でも請求することができる。
実用新案権者又は専用実施権者は、実用新案技術評価書を提示して警告をした後でなければ、自己の実用新案権又は専用実施権の侵害者等に対し、その権利を行使することができない(実29条2)。
7. 実用新案権者の侵害
特許権と異なり、実用新案権の侵害に関しては、過失の推定が適用されないので、賠償責任を請求する際には、権利者が侵害者の過失を立証しなければならない。
8. 実用新案権者の賠償責任
実用新案権者又は専用実施権者が侵害者等に対しその権利を行使し、又はその警告をした場合において、実用新案登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、その者は、その権利の行使又はその警告により相手方に与えた損害を賠償する責めに任ずる(実29条3)。
この時、たとえ肯定的な技術評価書を提示しても、損害賠償責任が発生する場合がある。
9. 実用新案に基づく特許出願
実用新案権者は、経済産業省令で定めるところにより、自己の実用新案登録に基づいて特許出願をすることができる。この場合においては、その実用新案権を放棄しなければならない(特46条2)。
実用新案登録出願の日から三年以内に特許出願する。
実用新案権の設定が登録されていなければ、優先権の主張を伴う特許出願ができる。