実験計画法概論

 

1. 実験計画法とは

(1)  定義

「品質特性に設定された設計品質を確保するために、ボトルネックとなる技術を明確にする。これらの技術と工程要因との因果関係を明確にし、最適解を求める手法である。(JISより)」

 

ž  品質特性に大きな影響を与えている要因と、その要因による影響の大きさを知ること。

ž  品質特性と要因(条件)の因果関係を明確にし、最適解(最適実験条件)を求め、その値を推定すること。

 

(2)  フィッシャーの三原則

@ 反復

同じ条件で「繰り返しのある実験」を行うことにより、実験結果が、調査目的となる要因による影響なのか、あるいは誤差によるばらつきの範囲なのかを判別する。

反復によって、交互作用を誤差と交絡させずに、分離することができる。

 

A 無作為化

実験の順序や反復回数が実験結果に影響を与えること(系統誤差)を防ぐために、「繰り返しのある実験」を、完全にランダムな順番で行う。

 

B 局所管理化

実験結果が、調査目的以外の要因の影響を受けないようにする。あるいは、独立した要因として考慮に入れる。

すなわち、「繰り返しのある実験」において、実験日や実験者の違いによる影響も要因として取り上げ、調査目的となる要因による影響と判別できるようにして、実験結果の分散分析を行う。

 

 

2. 要因配置実験

例:2因子実験(二元配置)

2因子実験とは、「応答変数に影響を与え得る二つの異なる因子を同時に検討する実験JISより)」である。

 

ここでは、全変動が、単純にAの群間変動+Bの群間変動+交互作用の変動+誤差変動(群内変動)で表されるようなモデルを仮定する。

 

データ構造は、

 

(1)  実験を行い、データをまとめる。

@ 要因A について、水準の数p、すなわちA1Ap

 

A 要因B について、水準の数q、すなわちB1Bq

 

B 同一条件において、それぞれ反復数n回の繰り返し実験を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1

2

k

n

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平均

 

 

範囲

 

 

合計

 

 

偏差

平方和

 

 

分散

 

 

 

ž  各自由度はn-1

 

ž  範囲

 

ž  偏差平方和

 

ž  分散

 

(2)  繰り返しのある実験の場合、ブロックごとの変動に関して等分散検定を行う。

pq種類の条件A1B1ApBqにおいて、ばらつきか同じ程度か否かを検証する。

 

@ F検定

ブロックごとの分散を比較し、帰無仮説

が採択されれば、等分散であるとみなす。

 

A 範囲の検定

管理図の管理限界線を計算する係数から、

ならば、等分散であるとみなす。

 

 

(3)  こんどは、群変動に関するF検定を行うために、仮説を立てる。

帰無仮説H0 要因Aが特性に影響を与えているといえない。

対立仮説H1 要因Aが特性に影響を与えているといえる。

 

帰無仮説H0 要因Bが特性に影響を与えているといえない。

対立仮説H1 要因Bが特性に影響を与えているといえる。

 

帰無仮説H0 交互作用 が特性に影響を与えているといえない。

対立仮説H1 交互作用 が特性に影響を与えているといえる。

 

 

(4)  変動を求める。

各変動を計算するには、合計と修正項から算出するか、偏差平方和から算出するかのどちらかである。

 

@ 修正項

 

A 総変動(データ全体の変動)

 

B Aの群間変動(Aの水準間の変動)

 

C Bの群間変動(Bの水準間の変動)

 

D ABの変動(特定されたブロックAB間の変動)

 

E 交互作用A×Bの変動

交互作用とは、互いに独立の因子が組み合わさった時に、特別な効果が表れることをいう。

 

F 誤差変動(群内変動)

 

または、

 

ブロックごとの合計・群ごとの合計

 

B

合計

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A

合計

 

 

 

各ブロックのデータ総数はnA各群のデータ総数はnqB各群のデータ総数はnp

 

(5)  自由度を求める。

 

(6)  分散を求める。

 

(7)  分散の期待値を求める。

 

(8)  寄与率を求める。

 

(9)  分散分析表を作る。

 

要因

 

変動

S

自由度

𝜙

分散

V = S /𝜙

分散比

F0

期待値

E(V )

寄与率

ρ

A

B

A×B

ε

 

 

T

 

 

 

 

 

(10)  F検定を行う。

 それぞれについて、

 

i.    ならば帰無仮説H0は棄却され、対立仮説H1が採択される。有意水準5%にて有意差あり。

 

ii.  ならば帰無仮説H0は棄却されない。有意水準5%にて有意でない。

 

帰無仮説が採択された時、有意でない要因は、誤差にプールして、分散分析表を改めて作り直す。

たとえば交互作用が有意でない場合は、

として、分散分析をやりなおす。

 

 

(11)  最適条件の点推定

ブロックごとの平均値と群平均値を表にする。

 

 

群平均

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

群平均

 

 

 

i.   交互作用が有意の場合

 

ii.  交互作用が有意でない場合

 

(12)  最適条件の区間推定(信頼度95%

i.   交互作用が有意の場合

 

ii.  交互作用が有意でない場合

 

  有効繰り返し回数

 

 

3. 乱塊法

(1) 目的

各条件の実験を行う順序を無作為化する。

 

(2) 手法

例えば4×416条件の場合、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乱塊法では、16条件を、nブロックに分割して行う。

1ブロック目:16条件を完全にランダムな順序で行う。

2ブロック目:16条件を完全にランダムな順序で行う。

nブロック目:16条件を完全にランダムな順序で行う。

 

要因については、A要因・B要因・交互作用A×B・誤差要因のほかに、ブロック因子Nが想定され、分散分析において、ブロック間の変動も考慮にいれる必要がある。

要因

 

変動

S

自由度

𝜙

分散

V = S/𝜙

分散比

F0

A

B

A×B

N

ε

 

T

 

 

(3) 完全無作為法との比較

完全無作為法では、全ての条件をランダムな順番に並べて行う。

順序は完全ランダムではあるが、ブロック間の変動を考慮しないので、誤差が大きくなる。

 

 

4. 分割実験

(1) 目的

実験条件の切り替えを減らし、負担を軽くする。

 

(2) 手法

前述の4×416条件の場合、

分割実験では、切り替えが困難なB因子(1次因子)を固定し、A因子(2次因子)の切り替えのみ行う。

ただし、B因子の繰り返しは乱塊法(または完全無作為法)で行う。

 

ここでは乱塊法を例として挙げる。nブロックに分割する。

 

1ブロック目

 

2ブロック目

nブロック目

 

 

 

 

一次誤差は、B因子とブロック因子Nの交互作用に相当する。

要因

 

変動

S

自由度

𝜙

分散

V = S /𝜙

分散比

F0

B

N

ε1

A

A×B

ε2

 

T

 

 

一次因子の検定精度は悪いが、二次因子・交互作用の検定精度は良い。

 

 

戻る

 

 

 

inserted by FC2 system