管理図

 

1. 管理図とは

(1) 管理図の定義

「連続した観測値もしくは群のある統計量の値を、通常は時間順またはサンプル番号順に打点した、上限管理境界線および/または、下限管理限界線を持つ図。打点した値の片方の管理限界方向への傾向の検出を補助するために、中心線が示される。(JISより)」

工程が安定な状態であるか、または、異常な状態(見逃せない原因による変動)であるかを判別する。

 

(2) シュハート管理図(3シグマ法管理図)

「工程が統計的管理状態であるかどうかを評価するための管理図。(JISより)」

3シグマ限界を管理状態とする。第一種の誤りは0.3%となる。

 

(3) 工程の状態

@ 安定な状態:現状がいつもと同程度のばらつきをもつ状態(=統計的管理状態)。

A 異常な状態:現状がいつものばらつきの範囲を超えて、いつもと違う状態。

 

(4) 品質特性のばらつきの原因

@ 偶然原因(安定な状態で発生するばらつき)

統計的管理状態で発生する、不可避な、突き止められない原因によるばらつき。

管理図において、群内変動として現れる。

 

A 異常原因(異常な状態で発生するばらつき)

工程に見逃せない異常事態(いつもと違った意味のあるばらつき)が発生した場合に生じる、突き止められる原因によるばらつき。

管理図において、群間変動として現れる。

工程に適切な処置をとり、再発を防止する。

 

(5) 使用目的による分類

@ 解析用管理図(標準値が与えられていない場合の管理図)

解析(改善)段階において、工程解析に用いられる管理図。

中心線は実線で、管理限界線は破線で描く。

測定したデータで管理限界線を計算したり、ヒストグラムを作って解析検討を行う目的で使用する。

  工程解析:工程から生み出される製品の品質特性と、その影響を及ぼす要因との関係を明らかにすること

 

A 管理用管理図(標準値が与えられている場合の管理図)

維持段階において、管理図本来の目的に沿った管理図。

中心線は実線で、管理限界線は一点鎖線で描く。

  結果の管理:製品の品質特性を測定し確認すること。

(⇔条件の管理:作業標準に従った作業が行われるように管理)

 

(6) 管理限界

管理図における管理限界を決定するために、意味のある均質な群内変動が用いられる。長期の安定性は、群間変動によって評価される。

管理限界は処置限界とも呼ばれる。処置限界の内側に、警戒限界が設けられる。

 

(7) 用語

@ 中心線(CL):平均値を示す線

A 管理限界線:上方管理限界(UCL)と下方管理限界(LCL)

B 群:サンプリングデータ一組をとるためのサンプル

C 群の大きさ(n):データ一組のサンプル個数(26個)

D 群の数(k):群が何組あるか

E 特性値:各群の平均値・範囲・標準偏差(σ:シグマ)など

 

(8) 管理図の検出力

実用上重要で無いかも知れない、比較的小さな変化に対しては、敏感ではない。

ゆえに、管理図は実用的な道具といえる。

 

(9) 管理図と要求規格

管理図における管理の規格と、要求される製品規格は、一般的に無関係である。

 

 

2. 管理図の見方

(1)  安定状態(=統計的管理状態)

@ 点が管理限界線(±3σ)の外に出ない(線上はセーフ)。

A 点の並び方に癖がない。

 

(2)  異常状態

@ 1点が管理限界線(±3σ)を越える。

 

A 連が現れる(9点が中心線の同じ側に連続してある)。

 

B 傾向・周期性がある(6点が連続して増加・減少する、14点が交互に増減する)。

 

C 点が管理限界線にしばしば接近する(連続する3点中2点が±2σを超える)。

 

D 点が中心線の遠くに集まって現れる(連続する5点中4点が±1σを超える、8点が連続して±1σを超える)。

 

 

E 点が中心線の近くに集まり過ぎている(15点が連続して±1σ以内にある)。

 

 

3. 管理図の種類と統計量

 

 

種類

管理対象

使用状況

理論分布

平均―範囲

一般的

正規分布

中央値―範囲

簡易的

平均

―標本標準偏差

高精度

個々のデータ

―移動範囲

nが少ない場合

不適合品数

nが一定の場合

二項分布

不適合品率

nが変わる場合

不適合数

不適合品数が少なく、

nが一定の場合

ポアソン分布

単位当たり

不適合数

不適合品数が少なく、

nが変わる場合

 

統計量

標準値が与えられている場合

標準値が与えられていない場合

中心線

UCL,LCL

中心線

UCL,LCL

 

 

各係数は、係数表より求める。

 

統計量

標準値が与えられている場合

標準値が与えられていない場合

中心線

3シグマ管理限界

中心線

3シグマ管理限界

二項分布、ポアソン分布の管理限界の3シグマの計算は、正規分布近似して行う。

 

 

4. 計量値の管理図

(1)  管理図(平均値と範囲)

データ数が少ない場合に用いる。一般によく使われる。

平均のわずかな変化に対しては、累積和管理図よりも、検出力が低い。

 

 管理図では、群間の違いを評価するが、群間変動と群内変動の両方の影響を受ける。 

 管理図では、工程の分散を評価し、群内変動のみの影響を受ける。

したがって、順序としては、 管理図を見てから、 管理図を見る。

 

@ データを取る。

群の大きさ  群の組 

 

A 群ごとの平均値、総平均値、群ごとのばらつき、総ばらつき、平均ばらつき を求める。

 

B  管理図・ 管理図の管理限界線を求め、 管理図を作る。

 

C 管理図により工程能力指数PCI (Cp)を検討する。

 

(2)  管理図(平均値と標本標準偏差)

データ数が多く、精度を要求される場合に用いる。

群の大きさ

 

(3)  管理図(中央値と範囲)

比較的容易に使用できる。 管理図は、 管理図よりも管理外れに敏感ではないので注意が必要。

 

(4)  管理図(個々のデータそのものと移動範囲)

データそのものを管理する。nが多く採れない場合や、群の内部が均一な場合に使用する。

群の大きさ

は、平均移動範囲を表す。

 管理図は、 管理図より速やかな処置がとれるが、検出力は弱い。

 

(5) 累積和管理図(統計量と参照値との偏差の累積和)

工程平均がシフト上にステップする変化に対して検出が早く、シフトした時点・シフト量の推定を容易に行うことができる。

 

(6) 移動平均管理図(現時点より前までの総平均)

工程内の水準を評価する。

 

(7) 移動範囲管理図(現時点より前までの範囲=総ばらつき)

工程内の変動を評価する。

範囲=最大−最小なので、群の大きさで用いられることが多い。

 

(8) トレンド管理図(期待される工程水準のトレンドと群の平均値との偏差)

工程水準のトレンドは、経験的に決めるか、回帰分析で決める。

 

 

5. 計数値の管理図

(1)   管理図(不適合品数)

11個の品物について適合・不適合を判定し、サンプル中の不適合品数で工程を管理する場合に用いられる。群の大きさ が一定の時に用いる。

 2項分布)

 

(2)   管理図(不適合品率)

不適合品率で工程を管理する場合に用いられる。群の大きさ が一定でない時に用いる。

 2項分布)

 

(3)   管理図(不適合数)

不適合の現れる範囲(群の大きさ)が一定の場合に用いる。

不適合品数が非常に少ない場合を不適合と言い、(不適合数)で表わす。

  管理図との対応)

 (ポアソン分布)

 

(4)   管理図(単位当たりの不適合数)

不適合の現れる範囲(群の大きさ)が一定でない場合に用いる。単位当たりの不適合数は、ある意味、不適合品率である。

 より、 

 (ポアソン分布)

 

 

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