信頼性モデル
1. システムの設計
(1) 直列系
「冗長がない複数個の構成要素からなるアイテム(JISより)」
システムの構成要素のうち、1つでも故障すれば、システム全体の故障となる。
直列系システムの信頼度は、構成要素の信頼度よりも低くなる。
信頼性ブロック図から、積集合として理解される。
したがって、システム全体の信頼度Rは、各構成要素の信頼度の積で表される。
不信頼度を表すFT図では、ORゲート(論理和)で表示する。
(不信頼度F=1-Rが各構成要素の不信頼度の論理和で表されるため。)
※論理和なので、ただの足し算では無い(偶発故障期や近似できる場合を除く)。
信頼度が論理積で、不信頼度が論理和である。これは、次のように考える。
たとえば懐中電灯のブロック図として、電池・スイッチ・電球の3つの要素で構成される直列系システムを仮定した場合に、
まず、懐中電灯が正常稼働するためには、全ての要素が正常に動作しなければならない。よって、システムの信頼度は、各要素の信頼度の論理積であらわされる。
一方、懐中電灯の故障について、電池・スイッチ・電球のどれか一つでも故障してしまえば、システム全体の故障となってしまう。よって、システムの不信頼度は、各要素の不信頼度の論理和で表される。
実際、製品の設計FMEAにおいて、多くの場合、直列系のブロック図を考えれば事足りる。
(2) 冗長系
システムの構成要素のうち、一部が故障しても、システム全体の機能は維持される。
冗長性とは、「規定の機能を遂行するための構成要素又は手段を余分に付加し、その一部が故障しても上位アイテムは故障とならない性質(JISより)」である。
@ 並列冗長
「すべての構成要素が機能的に並列に結合している冗長(JISより)」
システムの構成要素のうち、全てが故障した場合に、システム全体の故障となる。
並列系にすると、システムの信頼度が、構成要素の信頼度よりも高くできる。
信頼性ブロック図から、和集合として理解される。
(∵ド・モルガンの法則)
したがって、システム全体の不信頼度Fは、各構成要素の不信頼度の積で表される。
不信頼度を表すFT図では、ANDゲート(論理積)で表示する。
(不信頼度Fが各構成要素の不信頼度の論理積で表されるため。)
A m/n冗長
「n個の構成要素中、m個が正常に動作していれば系は正常に動作するように構成してある冗長(JISより)」
直列系と並列系の中間の特性を持つ。
n/n冗長=直列系
m/n冗長
1/n冗長=並列冗長
今、各構成要素の信頼度が全て同一のシステムを仮想すると、
k個が正常に動作し、n-k個が故障している場合の信頼度は、
システム全体として、m個以上が正常に動作していれば良いので、
システム全体の信頼度は、
⇔常用冗長「すべての構成要素が規定の機能を同時に果たすように構成してある冗長」
B 待機冗長系
「ある構成要素が規定の機能を遂行している間、切り換えられるまで予備として待機している構成要素をもつ冗長(JISより)」
システムの構成要素のうち1個だけを使用し、それ以外の構成要素はスイッチを切り換えるまで予備として待機させておく。
⇔常用冗長
2. 故障率曲線
(1) 基本的な故障パターン
@ DFR型(減少)
「故障率関数λ(t)がtの非増加関数である分布。
備考 正規分布、ガンマ分布(k≦1)、ワイブル分布(m≦1) 。(JISより)」
発生する故障は、設計ミス・製造工程の潜在的欠陥によるもの。故障率が時間とともに減少する。
デバンギング・バーンイン・エージングなどのスクリーニングによって、高い故障率のものを除去する。
スクリーニングとは、「故障メカニズムに即した試験によって潜在的欠点を含むアイテムを除去すること。(JISより)」
A CFR型(一定)
「故障率関数λ(t)がtにかかわらず一定である分布。すなわち指数分布。
備考 この分布は、 IFR、DFR分布のいずれにも属するということができる。 ガンマ分布でk=1、ワイブル分布でm=1の場合である。また、これらのいずれにも属さない分布の例として対数正規分布がある。(JISより)」
発生する故障は、まったく偶発的なものであるため、予知はできず、対策も取れない。
寿命分布は指数分布となり、故障率は低く一定である。
B IFR型(増加)
「故障率関数λ(t)がtの非減少関数である分布。
備考 正規分布、ガンマ分布(k≧1)、ワイブル分布(m≧1)。(JISより)」
発生する故障は、摩耗・劣化によるもの。故障率が時間とともに増加する。
予防保全によって、未然に故障を防止できる。
(2) 複雑なシステムの故障パターン
基本的な故障パターンの組み合わせにより、故障率がバスタブ曲線を描く。
@ 初期故障期(DFR型)
「使用後の比較的早い時期に、設計・製造上の欠点、使用環境との不適合などによって起こる故障(JISより)」
A 偶発故障期(CFR型)
「初期故障期間を過ぎ摩耗故障期間に至る以前の時期に、偶発的に起こる故障(JISより)」
B 摩耗故障期(IFR型)
「疲労摩耗老化現象などによって時間とともに故障率が大きくなる故障(JISより)」
それぞれの時期において、
・ 故障率を下げるための信頼性向上対策が異なる。
・ 故障解析するにあたって、故障モードが異なる。
3. 偶発故障期における直列系システムの信頼度・故障率
偶発故障期においては故障間隔が指数分布に従い、この場合どの期間をとっても故障率λは一定で、MTBFは故障率λの逆数になる。
寿命密度関数
信頼度
(1) 直列系システムの信頼度
(2) 直列系システムの故障率
(3) 直列系システムの平均故障間隔