品質マネジメントシステム
1. ISO 9001に定める品質マネジメントシステム
(1) ISO 9000ファミリー
国際標準化機構(ISO: International Organization for Standardization)による、品質マネジメントシステムに関する、国際規格群。
ISO 9000シリーズによる品質マネジメントシステム審査登録制度では、ISO 9001に基づき、企業の品質マネジメントシステムを民間の第三者機関が審査し、合格した企業・工場を登録し、公表する。
@ ISO 9000:2005
品質マネジメントシステム−基本及び用語
A ISO 9001:2008
品質マネジメントシステム−要求事項(認証・登録について)
B ISO 9004:2009
組織の持続的成功のための運営管理−品質マネジメントアプローチ
C ISO 19011:2002
品質マネジメントシステム監査のための指針(内部監査の規格)
(2) 品質マネジメントの八つの原則
品質マネジメントシステム(QMS: Quality Management System)とは、品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム。
@ 顧客重視
組織はその顧客に依存しており、そのために、現在及び将来の顧客ニーズを理解し、顧客要求事項を満たし、顧客の期待を越えるように努力すべきである。
A リーダーシップ
リーダーは、組織の目的及び方向を一致させる。リーダーは、人々が組織の目標を達成することに十分に参画できる内部環境を創りだし、維持すべきである。
B 人々の参加
すべての階層の人々は組織にとって根本的要素であり、その全面的な参画によって、組織の便益のためにその能力を活用することが可能となる。
C プロセスアプローチ
活動及び関連する資源が一つのプロセスとして運営管理されるとき、望まれる結果がより効率よく達成される。
D マネジメントのシステムへアプローチ
相互の関連するプロセスを一つのシステムとして、明確にし、理解し、運営管理することが組織の目標を効果的で効率よく達成することに寄与する。
E 継続的改善
組織の総合的パフォーマンスの継続的改善を組織の永遠の目標とすべきである。
F 意思決定への事実に基づくアプローチ
効果的な意思決定は、データ及び情報の分析に基づいている。
G 供給者との互恵関係
組織及びその供給者は依存しており、両者の互恵関係は両者の価値創造能力を高める。
(3) 品質マネジメントシステムのプロセスアプローチ
品質マネジメントシステムは、ISO 9001:2008の要求事項に従って確立し、文書化し、実施しかつ維持する。要求事項はあるが、具体的な規定はないので、個々の企業に合ったシステム構造や文書体系を構築する。
プロセスアプローチにおいては、インプットとアウトプットを定め、過程(プロセス)を重視する。
@ 顧客のニーズ・期待を明確にする。
A 組織の品質方針・品質目標を明確にする。
B 品質目標の達成に必要なプロセス・責任を明確にする。
C 品質目標の達成に必要な資源を明確にし、提供する。
D 各プロセスの有効性・効率の測定方法を設定する。
E 各プロセスの有効性・効率の判定手段を決定する。
F 不適合を予防し、その原因を除去するための手段を決定する。
G 品質マネジメントシステムの継続的改善のためのプロセスを確立し、適用する。
(4) 品質マニュアル
自社の品質マネジメントシステムに関する基本方針や品質システム体系を文書化したもの。
@ 品質方針・品質目標
A 品質に影響する作業を管理・実施・検証・レビューする要員の責任・権限・相互関係
B 品質マネジメントシステムの手順・指示
C マニュアルの見直し・改定・管理
2. ISO 9001認証取得
(1) 認証取得のメリット
@ 国際競争力の獲得
A 顧客満足度の向上
B 業務のマニュアル化による信頼度確保
(2) 認証取得への取り組み
@ 経営者が管理責任者を選出し、その義務・権限を規定する。
必要な経営資源を投入する準備をする。
A 管理責任者が認証取得のマスタースケジュール作成し、関係部署との調整を図り、経営者の承認を得た上で、全社的に宣言する。
品質方針・品質目標を設定し、各部署での方針展開を完了する。
B 各部門が担当業務を分析し、ISO 9001要求事項との整合性を検討する。場合によっては改善を図る。
C 管理責任者が、品質マニュアルの草案を作成し、部門間の連携、社内全体のシステムとしての運用の可否を確認する。
その結果を受けて、品質マニュアルを制定し、関連する標準も制定する。
D マニュアル通り業務を遂行し、不都合がある場合は改善する。
E 経営者・管理責任者は、内部監査員を選出・教育・訓練し、内部監査を実施する。
不適合事項については是正処置をとる。
F 全社員・外注先に教育・訓練を行い、品質マネジメントシステムの理解と徹底を図る。
G 定められた間隔で内部監査を実施し、不適合事項の是正処置をとり、品質システムのさらなる改善を進める。
3. 内部監査
(1) 内部監査の目的
@ 自社のマネジメントシステムと、ISO 9001:2008の要求事項との適合性の評価
A 自社のマネジメントシステムと、顧客の要求事項・法的な要求事項との適合性の評価
B 品質マネジメントシステムの効果的な実施・維持・有効性の評価
(2) 内部監査の実施
@ 経営者が、監査を行う力量を持った者を、内部監査員に任命する。
A 監査員は、監査対象部署の品質マネジメントシステムのプロセス・仕事の流れ・重要性・過去の監査結果を考慮した上で、監査計画を作成する。
監査計画を作成する場合の監査基準・範囲・頻度・方法については、あらかじめルール化し、品質マニュアルか社内標準に規定しておく。
なお、監査員の監査範囲は、自らの仕事の範囲を除く。
B 監査の手順(計画・実施の方法・結果報告記録の維持管理)を確立し、文書化しておく。
C 被監査部署の責任者は、発見された不適合に対して、是正処置・予防処置を実施する。
D 監査員は、不適合に対する是正処置を要求した場合、処置結果に対して、フォローアップ監査を実施する。