品質管理概論
1. 品質管理
(1) 用語
@ 品質管理(QC: Quality Control)
「品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部(JISより)」
品質要求事項を満たすために、品質規格を設定し、それを実現するための手段。
A 品質マネジメントシステム(QMS: Quality Management System)
品質に関して組織を指揮し、管理するためのマネジメントシステム。
B 統計的品質管理(SQC: Statistical Quality Control)
品質管理のうち、統計的手法を採用したもの。
製品一つ一つの品質ではなく、工程全体の品質特性とそのばらつきを見て管理を行う。
C 総合的品質管理(TQC: Total Quality ControlまたはTQM: Total Quality Management)
全社的品質管理(CWQC: Company-Wide Quality Control)
「顧客の満足を通じての長期的な成功、並びに組織の構成員および社会の利益を目的とする、品質を中核とした、組織の構成員全ての参画を基礎とする、組織の経営の方法(廃止JISより)」
品質管理を、製造部門以外にも展開したもの。調査・設計・生産・販売において、統計的な原理と手法を応用する。
D 国際標準化機構(ISO: International Organization for Standardization)
ISO 9000シリーズによる品質マネジメントシステム審査登録制度では、ISO 9001に基づき、企業の品質マネジメントシステムを民間の第三者機関が審査し、合格した企業・工場を登録し、公表する。
(2) 日本での発展
1950年代 |
SQCを工業に活用 事実に基づくデータの統計的解析が始まる |
1960年代 |
SQCからTQCへ 毎年11月を品質月間と定める 1969年頃、高品質の商品が高能率・低コストで生産されるようになり、日本のTQCが注目される ※ TQCとは、QCサークルなど現場での改善活動を軸とした、日本でのボトムアップ型の品質管理 |
1970年代 |
TQCの確立 高度成長の終わり(1973年) 第一次オイルショック(1973年) 第二次オイルショック(1979年) 省エネの時代へ |
1980年代 |
TQCの拡大 製造業以外へのTQC展開 |
1990年代 |
TQCからTQMへ ISO 9000〜9004の規格を採用し、JIS Z 9900シリーズとして制定 ※ TQMとは、品質・顧客満足度を目標とした、アメリカでのトップダウン型の経営戦略 |
2000年代 |
ISO 9001による品質マネジメントシステムの広がり |
2. 品質
(1) 用語
@ 品質(Quality)
「本来備わっている特性の集まりが要求事項を満たす程度。(JISより)」
品物・サービスにおいて、要求事項を満たす能力に関する、固有の特性の全体。
A 特性(Characteristic)
「そのものを識別するための性質。(JISより)」
定性的特性・定量的特性のどちらもある。
B 要求事項(Requirement)
「明示されている、通常暗黙のうちに了解されている、または義務として要求されているニーズもしくは期待。(JISより)」
C QCD
広義の品質。品質(Quality)、原価・費用(Cost)、生産量・納期・工期(Delivery)。
(2) 設計・製造・販売における品質
@ ハードの品質
・ 設計品質(ねらいの品質)⇔使用品質
「製造の目標としてねらった品質。(JISより)」
品質特性(寸法、電気特性等)を、品質規格(製品規格、原材料規格等)について、規格値で具体的に規定。
・ 製造品質(できばえ・適合の品質)
「設計品質をねらって製造した製品の実際の品質。(JISより)」
ロットまたは工程の合格率(または不適合品率)、平均値とばらつきなどで表わされる。
A ソフトの品質
・ サービスの品質
製品の誤用・乱用の防止、販売後のアフターサービス。
事務部門、サービス業において、顧客の満足(CS: Customer Satisfaction)を得ることを目指して、後工程はお客様という考え方に立って品質管理に取り組むこと。
(3) 使用者が要求する品質
@ 使用品質
品質に対する使用者の要求度合い。真の特性。
i. 性能特性:計測可能な機能特性。
ii. 代用特性:官能特性(肌ざわり、うまさ、使いやすさ等)を技術的に翻訳。
A 信頼性
「アイテムが与えられた条件で規定の期間中、要求された機能を果たすことができる性質。(JISより)」
ある定められた環境条件の下、規定の期間中、使用品質を満たすこと。
B 安全性
「人間の死傷又は資材に損失若しくは損傷を与えるような状態のないこと。(JISより)」
使用の過程での品質問題発生を予防するため、安全性を重視する。
・ 製造物責任・製品責任(PL: Product Liability)
「設計、製造若しくは表示に欠陥がある製品を使用した者、又は第三者がその欠陥のために受けた損害に対して、製造業者や販売業者が負うべき賠償責任。(JISより)」
・ 製品責任予防(PLP: Product Liability Prevention)
製品責任が発生しないように製造業者や販売業者が行う予防活動。
(4) 品質の指向性
@ 生産者指向の品質
生産者優先の経営姿勢(プロダクトアウト)
A 消費者指向の品質
消費者志向の経営姿勢(マーケットイン)
消費者主義(コンシューマリズム)
使用品質重視の品質経営
B 社会性指向の品質
社会に公害をもたらすものを避け、環境保全を重視する。
(5) 品質とコストのバランス
消費者側:価格・ライフサイクルコスト
生産者側:原価・つくりやすさ
3. 管理
(1) 管理項目となる八要素(QCDPSME)
@ 品質(Quality)
A コスト(Cost)
B 納期(Delivery)
C 生産性(Productivity)
D 安全(Safety)
E 志気・モラール(Morale)
F 環境(Environment)
(2) 管理のサイクル(デミングサイクル・シュハートサイクル):PDCA
@ 計画(Plan)
A 実施(Do)
B 確認(Check)
C 処置(Act)
※ Checkの替わりにStudyを入れて、PDSAとする場合もある。
(3) 事実に基づく管理(Fact Control)
固有技術をもとに、データと統計的手法で、工程解析・維持管理・改善効果の評価を行う。
@ サンプリングされたサンプル(製品個々)のデータを測定することにより、母集団(ロット)の全体が満足なものであるかを推論する。
A 統計的な考え方に基づく手法(QC7つ道具など)で、品質の変動=ばらつきを判断する。
(4) 原因と結果の因果関係
@ 工程管理
特性(結果)を計測監視し、工程異常の発生や変動に対して、要因(原因)にフィードバックし、工程を安定状態に維持する。⇔×対症療法
QC工程表の管理項目(原因)-品質特性(結果)の因果関係によって、管理運用する。
i. 工程(原因)のチェック:工程管理の点検項目→標準通り行われているか
ii. 品質特性(結果)のチェック:特性値から工程の安定状態を判断
A 工程解析
要因-特性の因果関係の調査により、取り上げたテーマを解析し、対策をとる。
B 開発における設計審査(DR: Design Review)
過去のトラブルの要因から、欠点を未然に予防する。
4. 工程の維持と改善
(1) 維持=工程管理
「品質は工程で作る」「品質で工程を管理する」
@ 計画(Plan)
目的(品質標準)とそれを達成する手段・方法を決める。作業者の教育・訓練をする。
A 実施(Do)
仕事を実施する。
B 確認(Check)
仕事が計画通りか確認する。結果が目的通りか確認する。
C 処置(Act)
処置をする。処置の結果を確認する。
(2) 改善=工程解析
現在の工程について、解析・検討することにより、改善を図る。
・ 改善の着眼点:ムリ、ムダ、ムラ(3ム)
・ 重点志向:パレート図等を用いて、重要事項に焦点を絞って、効率のよい改善を行う。
@ 計画(Plan)
問題を発見し、テーマを選定する。目標・計画を立てる。
A 実施(Do)
現状を調査し、データを集め、工程解析をする。
B 確認(Check)
解析結果と改善案を検討し、対策を立てる。
C 処置(Act)
対策を実行する。効果を確認する。
(3) 改善後の標準化
標準化とは、「実在の問題または起こる可能性のある問題に関して、与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として、共通にかつ繰り返して使用するための記述事項を確立する活動。(JISより)」
・ 後戻りしないように歯止めをする
・ 標準化と管理の定着:維持管理→改善→標準化→維持管理(水準のスパイラルアップ)
5. 検査
「品物またはサービスの1つ以上の特性値に対して、測定・試験・検定・ゲージ合わせなどを行って、規定要求事項と比較して適合しているかどうかを判定する活動。(JISより)
@ 個々の品物に対する検査(適合品・不適合品)
A ロットに対する検査(ロット合格・不合格)
6. 考え方と用語
(1) 5M1S:結果に影響を与える要因
@ 人(Man)
A 機械・設備(Machine)
B 原材料 (Material)
C 方法 (Method)
D 測定 (Measurement)
E サンプリング(Sampling)
(2) 5ゲン主義:問題に対する対処
@ 現場・現物・現実(三現主義)
A 原理・原則