品質保証
1. 品質保証とは
(1) 品質保証(QA: Quality Assurance)
「消費者の要求する品質が十分に満たされていることを保証するために、生産者が行う体系的活動(JISより)」
「品質要求事項が満たされるという確信を顧客に与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部。(ISO 9001より)」
狭義の品質(Quality)が所定の水準にあることを保証すること。
(2) 品質保証の目的
@ 内部品質保証
組織内においては、品質保証は経営者に対して信頼感を供する。
A 外部品質保証
契約またはその他の状況においては、品質保証は顧客またはその他に対して信頼感を供する。
市場型商品(不特定多数の顧客向け商品)、契約型商品(特定の顧客向け商品)ともに、品質保証活動は必要である。
2. 各段階における品質保証
各ステップごとの品質保証体制を確立し、品質保証体系図としてまとめる。そして、各部門の責任・部門間のインターフェース・情報のフィードバックを明確にする。
(1) 市場情報収集
マーケットインに留意し、顧客のニーズ(要求品質)を把握する。
信頼性における外的因子にかかわる環境条件・使用条件を把握する。
(2) 企画
品質機能展開と品質表によって、ニーズと製品の仕様の対応を明示する。
設計FMEAやFTAによって、予測できるトラブルに対して歯止めをかける。
品質表
|
技術仕様 |
|||||||
体積 密度 |
周波 対応 |
温度 安定 |
損失 |
経時 安定 |
発熱 |
故障 率 |
||
ニ | ズ |
特性が優秀 |
○ |
○ |
|
|
|
|
|
省スペース |
○ |
|
|
|
|
○ |
|
|
温度範囲 |
|
|
○ |
○ |
|
○ |
|
|
省エネ |
|
|
|
○ |
|
○ |
|
|
長寿命 |
|
|
|
|
○ |
○ |
○ |
品質機能展開
要求品質 |
品質特性 |
重 要 度 |
||||||||
一次 |
二次 |
三次 |
構造 |
部材 |
||||||
封 口 性 |
接 続 抵 抗 |
電 極 構 造 |
箔 容 量 |
皮 膜 特 性 |
電 解 液 特 性 |
電 解 紙 特 性 |
||||
電気 特性 |
大容量 |
容量密度 |
|
|
○ |
◎ |
○ |
|
|
A |
高周波 |
|
|
|
◎ |
|
○ |
|
C |
||
温度安定 |
|
|
|
○ |
|
◎ |
○ |
B |
||
低損失 |
素子 |
|
|
○ |
|
○ |
◎ |
|
B |
|
外部 |
|
◎ |
○ |
|
|
|
|
C |
||
温度安定 |
|
|
|
|
○ |
◎ |
○ |
B |
||
耐久 性 |
耐用 寿命 |
経時安定 |
◎ |
|
|
|
○ |
○ |
|
A |
発熱 |
|
○ |
◎ |
|
○ |
○ |
○ |
A |
||
故障率 |
耐電圧 |
|
|
|
|
◎ |
○ |
○ |
B |
|
耐熱性 |
○ |
|
|
|
○ |
◎ |
|
B |
(3) 開発・設計
設計審査(DR: Design Reviw)を行い、また設計FMEAやFTAによって、信頼性を作り込む。
試作品(PM: Proto Model)・エンジニアリングモデル(EM)を作り、信頼性試験を行う。
生産性の高い(作りやすい、生産コストの低い)設計図面を作る。作りにくい場合、誤加工などが発生しやすい場合は、あらかじめ対策を立てる。
(4) 生産準備
設備と機械について、設計で定められた公差をクリアするために、工程能力指数PCIを調べ、PCI≧1.33を満たすようにする。
人と方法について、工程で品質を作り込むために、作業標準を確立する。
(5) 生産
管理図で工程管理し、PCIを満たす。
工程FMEAを作り、生産上の問題点を検討し、重点管理をする。フールプルーフを施す。
量産品による信頼性試験を行う。
(6) 販売・販売後・使用後
使用上のアベイラビリティを確保するために、システムの要素である補給部品を整備する。
サービスマニュアルや、アフターサービス(販売後の維持管理)を担当する技術者を用意する。
顧客ごとに、品種・機種などに関する最適な情報を提供する(リコメンド)。
(7) 外注・購買
外注においても同様に、各分野における品質保証活動を行う。
購買においては、購買先の選定や受入れで、要求品質の水準を満たしていることを確認する。
3. 品質保証と信頼性
信頼性とは、「アイテムが与えられた条件下で規定の期間中、要求された機能を果たすことができる性質(JISより)」であり、使用者が要求する品質に含まれる。
(1) 源流管理
品質保証活動において、顧客からのクレーム処理は、後手に回った方策といえる。
そこで、源流にさかのぼって、まず、開発・設計の段階で欠陥防止の方策を考慮する。すなわち、早い段階で、デザインレビュー・FMEA・FTAなどの信頼性手法を活用する。
次に、生産よりも前の段階(生産準備)でも、工程FMEAを作り、生産上の問題点や、重点管理項目の洗い出しをする。
各段階における品質保証活動を同時進行で進め、源流管理を体系的に行い、高品質・高効率の開発・生産を行うことを、コンカレントエンジニアリング(CE: Concurrent Engineering)という。
(2) 魅力的品質
・ 当たり前品質:故障・不良の少ないこと
・ 魅力的品質:顧客のニーズを正確にとらえること
魅力的品質を技術的に実現するには、故障解析などの信頼性手法が大きな役割を担う。
(3) コスト(Cost)・納期(Delivery)とのバランス
広義の品質(QCD)に関して、信頼性とコスト、信頼性と納期はそれぞれ相反関係ではなく、最適となる条件が存在し、品質保証活動における信頼性手法によって相補関係が成立する。
4. 製造物責任(製品責任)
(1) 製造物責任(PL: Product Liability)
「設計、製造若しくは表示に欠陥がある製品を使用した者、又は第三者がその欠陥のために受けた損害に対して、製造業者や販売業者が負うべき賠償責任。(JISより)」
(2) PL法
「この法律は、製造物の欠陥により人の生命・身体・財産に係る被害が生じた場合における製造者等の損害賠償責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。(PL法第一条)」
(3) 欠陥(または不合理に危険な状態)
「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること(PL法第二条)」
@ 設計による欠陥
設計自体に問題があるために安全性を欠いた場合
A 製造による欠陥
製造物が設計や仕様どおりに製造されなかったために安全性を欠いた場合
B 表示・警告の不備による欠陥
製造物から除くことが不可能な危険がある場合に、その危険に関する適切な情報を与えなかった場合
(4) 欠陥の判断基準
@ 消費者期待基準
設計者の意図した使用条件で無くても、社会通念上ありうる条件ならば、消費者の使用ミスではなく、欠陥と判断される。
A 危険効用基準
B 標準逸脱基準
(5) 企業における予防・対策
@ 製造物責任予防(PLP: Product Liability Prevention)
「製品責任が発生しないように製造業者や販売業者が行う予防活動(JISより)」
未然の予防。欠陥品を出さない。
A 製造物責任防御(PLD: Product Liability Defense)
有事の事後的対策。欠陥品の広がりを最小化する。
B 製品安全(PS: Product Safety)
事後予防。同種の欠陥が再発することを未然に防止するように対策を立てる。
5. 顧客満足
(1) 顧客要求と顧客満足
顧客満足とは、「顧客の要求事項が満たされている程度に関する顧客の受け止め方(JISより)」をいう。
顧客の苦情は顧客満足が低いことの一般的な指標となる。
ただし、顧客の苦情がないことは、必ずしも顧客満足が高いわけではない。
したがって、顧客要求が満たされている場合でも、顧客満足が高いことを保証するものではない。
(2) 満足
商品を適正な価格で購入し、期待通りの機能が発揮され、長く使用できること。
万一トラブルが発生しても十分なアフターサービスを得られることによって安心して使用できること。
(3) 継続的改善
顧客のニーズ・期待は変化し、競争と技術の進歩がある。そこで管理のサイクルを回し、継続的な改善を図る。
@ 計画(Plan)
現状の顧客要求事項を分析し、改善の目標を設定する。
目標を達成するための解決策を評価・選定する。
A 実施(Do)
選定した解決策を実施する。
B 確認(Check)
実施結果を測定・検証・分析・評価する。
C 処置(Act)
解決策による変更を正式なものにする。
さらに改善の結果をレビューする。
6. 苦情・クレーム
(1) 苦情
「製品・付帯サービスに関連する消費者の不満足の表明。さらに、製品・付帯サービスの提供に関連する組織の活動、または活動の結果によってもたらされる消費者の不満足を含む。(旧JISより)」
不満・不公平の改善を要求する行為。顧客要求事項から逸脱すると発生する。
苦情対応では、責任が提供側にあるか顧客側にあるかをはっきりさせる必要がある。苦情内容・対応が原因で損害賠償・訴訟に発展する。
(2) 顕在クレーム
損害賠償など具体的請求を伴う行為。顧客から販売店または生産者に持ち込まれる。
(3) 潜在クレーム
持ち込まれないで顧客の胸の中にしまわれる。
7. 第三者評価制度
(1) 評価・監査の相違
@ 第一者評価・監査(内部監査)
当事者自ら、自己の組織の品質システム等を評価・監査すること。
A 第二者評価・監査(外部監査)
購入者が供給先の品質システム等を評価・監査すること。
B 第三者評価・監査・審査(外部監査)
認定機関から認証を受けた審査機関が、企業からの依頼により、特定の項目について適合するかどうかを審査し、認証すること(適合性評価)。
(2) 第三者評価の目的
重要な品質を規格に定め、個々の製品が規格に適合していること(規格適合性評価)を、第三者が証明すること。この証明によって、消費者が商品を購入する場合や、工場で原材料を購入する場合に、安心して購入できる。
(3) JISマーク表示制度
@ 認証
従来は、国が直接、認定を行ってきた。
現在は、国によって登録された民間の第三者機関(登録認証機関)が、当該製品がJISに適合していると判定した場合に、申請者に対して、JISマークの認証を行う。
A 基準
国際的な基準に基づいた、工場の品質管理体制及び製品試験での評価によって、認証される。
品質管理体制については、ISO 9001による品質マネジメントシステムに適合することが要求事項として規定されている。
(4) ISO品質マネジメントシステム(ISO 9000シリーズ)の認証
@ 認証
認定機関から認証された第三者機関が、企業・公的機関からの申請を受けて、その企業・公的機関の品質マネジメントシステムが国際規格への適合性を有しているかを審査し、ISO 9000シリーズの認証を行う。
A ISO 9000シリーズ
品質保証を含んだ、顧客満足の向上を目指すための規格。品質管理を管理する。
うち、ISO 9000には品質マネジメントシステムの基本・用語が、ISO 9001には品質マネジメントシステムの要求事項について記されている。