同期電動機

 

1. 同期機の特徴

ž  界磁電流の制御により、任意の力率で運転することができる。→同期調相器

ž  回転速度が一定である。

ž  始動トルクが小さいので、始動用に制動巻線や、電動機が必要となる。

ž  励磁のための直流電源が必要となる。

ž  大きな出力を要する負荷、同期速度で回転することを要する負荷に適用される。

 

 

2. 同期電動機の原理

(1)  回転

同期電動機は、回転子が回転磁界と同じ速度(すなわち同期速度)で回転している場合に、トルクを発生する。

 

電動機に負荷がかかると、回転子の位相が回転磁界から負荷角δだけ遅れるものの、回転速度は変わらない。

 

無負荷ならば負荷角は0°となる。

 

位相は、誘導起電力が回転子(トルク)に、端子電圧が回転磁界に対応すると考える。

 


 

(2)  電機子反作用

同期電動機の電機子反作用は、同期発電機の場合と逆になる。

すなわち、電機子電流が遅れる場合には、増磁作用を、電機子電流が進む場合には、減磁作用をする。

 

   @ 同位相      A 遅れ      B 進み

 

(3)  同期電動機の出力(同期ワット)

同期電動機の端子電圧と誘導起電力の関係は、

(発電機の場合は、を入れ替える。)

 

抵抗を0とみなし、さらに鉄損・機械損を無視した場合、

三相分の電動機出力(同期ワット)は、

 

ただしこの場合の力率は、誘導起電力と電流の関係を表している。

(発電機の場合の力率は、端子電圧と電流の関係を表している。)


 

(4)  同期電動機のトルク

同期速度は、

同期角速度は、

 

出力とトルクの関係

 

したがって、トルクは、

 

 でトルク最大となる。

これ以上負荷をかけると、同期はずれを起こして停止する。この時のトルクを脱出トルクという。

 

 

3. 同期電動機と力率

同期発電機では、起電力の大きさ、すなわち界磁電流を変えることによって、無効電力を調整し、力率を制御することができる。

(1)  界磁と力率

端子電圧一定、出力一定(有効電力一定)、負荷一定の場合、

 より、 の大きさが一定となる。

すなわち、起電力(界磁)の大きさによって、力率、負荷角、電流が変わる。

特に界磁電流と電機子電流の関係を位相特性曲線(V曲線)という。

 

@ 力率1の場合

電流は最小となる。

 

A 減磁(界磁電流小)

遅れ電流が流れる。 が増加するので、電流増加。

 

B 増磁

進み電流が流れる。 が増加するので、電流増加。

 

(2)  同期調相器

位相特性を利用し、無負荷の三相同期電動機を受電端で負荷に並列に接続すれば、無効電力を供給し受電電圧を一定に保つはたらきをする。

@ 重負荷時

過励磁にすればコンデンサとして働き、線路から進み電流を取り、電圧降下を減少させる。

 

A 軽負荷時

不足励磁にすればリアクトルとして働き、線路から遅れ電流を取り、異常電圧上昇を抑制する。

 


 

4. 同期電動機の運転

(1)  始動

同期電動機は同期速度で回転している場合にのみトルクを発生するので、電動機単体では始動トルクは0となる。

また、乱調の防止策と始動トルクの発生方法は相反する。すなわち、始動の時には、制動巻線は抵抗率が高い方が良く、はずみ車効果は小さい方が良い。

 

@ 自己始動法

制動巻線による始動トルクを利用し、かご形誘導電動機として始動する。

始動トルクが小さいので、無負荷または軽負荷で始動する必要がある。

 

i.   全電圧始動

全電圧を加えるので、始動電流が大きくなってしまう。

 

ii.  リアクトル始動

直列リアクトルで、始動電流を制限する。始動トルクが著しく減少する。

 

iii.補償器始動

始動電流を制限するため電圧を下げて始動し、同期速度近くに達してから界磁を励磁し、そのあとで全電圧を印加する。

 

 

A 電動機始動法

まず、主機に直結させた始動用電動機を用い、同期電動機を無負荷で運転する。次に同期速度近くに達した時に同期電動機に励磁を与え、同期発電機として並行運転し同期化する。最終的に始動用電動機の電源を切り離す。

 

 

(2)  乱調の防止(安定度の向上)

乱調とは、負荷の急変、端子電圧の急変、周波数の急変などによって、負荷角が振動すること。

@ 制動巻線の採用

回転子が同期速度を外れた場合に、制動トルクが発生する。巻線の抵抗率は小さい方が良い。

 

A はずみ車(フライホイール)の採用

回転子の角速度を均一にし、負荷が急変した時の、回転速度の急変を抑える。

 

 

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