配電全般
1. 配電系統
配電用変電所から需要家引込口まで
(1) 配電電圧
@ 低圧:600VAC以下、750VDC以下
A 高圧:7000V以下(600VAC超、750VDC超)
B 特別高圧:7000V超
(2) 低圧配電線の電気方式
@ 単相2線式
電圧降下・電力損失が大きい。
電灯用に100Vが従来から採用されてきた。
電力用に100V・200Vが採用されている。
A 単相3線式100/200V
中性線にはヒューズを設けない。
経済的に有利。
電灯用に採用されている。
B 三相3線式200V
1台の変圧器が故障した場合、V結線で運転できる。
動力負荷の電源として採用される。
C 三相4線式400V
三相415Vが動力用に使われる。
単相240Vが水銀灯に使われる。
単相100Vがコンセントに使われる。
(3) 配電系統の高電圧化
a.高圧配電線:6.6kVから20kVへ
20kV地中配電方式は、過密地域で採用される。
20kV架空配電方式は、都心埋立地、中小工業団地、過疎地域で採用される。
b.低圧配電線:6.6kV/100V・200Vから20kV/400Vへ
20kV/400V配電方式は、過密地域で採用される。
400Vならば、使用電圧で受電するので、変圧器・開閉器が省略できる。
400Vならば、国際規格に整合しているので、海外製品も導入できる。
@ 高電圧化による供給側のメリット
送電容量の増大
電流減少による、電圧降下・電力損失の低減
同じ送電容量の場合、所要配電線が少なくて済む。したがって、設備の縮小化も可能。
発電・変電設備の縮減により、事故が抑えられるので、供給信頼度が増す。
A 高電圧化による需要側のメリット
電流減少による、電圧降下の低減
同じ受電容量の場合、所要配電線・導体が少なくて済む。
電灯用と電力用の配電線を共用できる。
高電圧だと、大出力機器が使用しやすい。
B 高電圧化による総合的なメリット
電力損失の低減により、省エネルギー化・二酸化炭素排出量の抑制。
配電線量・設備の縮減により、保守費用が削減でき、電気料金の低減が可能。
(4) 配電方式
@ 樹枝状方式(20kV級架空配電線では放射状方式)
従来から採用されてきた配電方式。
樹枝状に幹線と分岐線を延長する。施設費が安価で、最も多く採用されている。
供給信頼度を確保するため、幹線は自動区分開閉器によって分割されており、事故発生時には事故区間のみ遮断される。
A ループ方式(20kV級架空配電線では本予備線方式)
従来から採用されてきた配電方式。
ループ状開閉器を通じて、線路が環状になっている。
常時開路ループ
故障発生時・作業停電時にのみ開閉器を自動投入する。
常時閉路ループ
電流分布が改善され、電圧降下・電力損失が少なく、融通が利く。
B スポットネットワーク方式
20kV級地中配電方式で採用される。
配電線3回線から分岐線をT分岐で引き込み、受電用断路器を経て、ネットワーク変圧器に接続する。低電圧側はネットワークプロテクタを経て、並列接続し、ネットワーク母線を構成する。
ビルなど集中した大口需要家への、大容量・高信頼度要求への対応方式。
1回線が停止しても、健全回線によって全負荷供給できるので、信頼度が高い。
受電設備の一次側遮断器を省略できる。断路器のみ。
※ ネットワークプロテクタ:プロテクタ遮断器+プロテクタリレー(逆電力継電器)
後備保護にプロテクタヒューズを備える。
ネットワーク母線の事故には対応できない。
※ ネットワークプロテクタリレーの特性
リレーは変圧器の二次側から一側に流れる電流で、遮断器を動作させる。
フィーダが変電所で遮断された場合、健全フィーダに接続された変圧器のネットワーク側からの逆電力に対しプロテクタを開放(遮断)する特性を持つ。
プロテクタが開放されていて、ネットワーク側電圧より変圧器二次側電圧が高い場合に、プロテクタを自動投入(閉路)する特性を持つ。
全フィーダが変電所で解放されている状態(ネットワーク側は無電圧)から、一つのフィーダが投入された時に、プロテクタを自動投入する特性を持つ。
C 低圧ネットワーク方式(レギュラネットワーク方式)
20kV級地中配電方式で採用される。
同一母線2回線以上のフィーダから、網目格子状に相互連係された低圧幹線を通し、ネットワークプロテクタを経て給電される。
過密地域に採用される。
1フィーダが停電しても、健全フィーダによって全負荷供給できるので、信頼度がきわめて高い。電圧変動も少ない。
施設費が高い。
D 低圧バンキング方式
同一の特別高圧・高圧配電線に接続されている2台以上の配電用変圧器の低圧配電線を相互に接続する。
事故・作業時の停電範囲が小さくできる。
電力損失が低減できる。
変動負荷によるフリッカ(電圧変動)が軽減される。
需要増加に対する融通が利く。
高電圧側の事故には対応できない。⇔スポットネットワーク方式
保護協調が適切でないと、短絡事故の際に健全な変圧器に荷重負荷がかかり、次々と遮断され(カスケーディング)、広範囲の停電を起こす。
(5) 配電電圧の調整
@ 配電用変電所
線路電圧降下補償装置
負荷時タップ切換変圧器
A 配電線
線路用電圧調整器(単巻変圧器)
昇圧器(V結線型三相変圧器)
相電圧のバランスを取るため、分散配置、昇圧相を順次変える
B 柱上変圧器
2. 電圧フリッカ
(1) フリッカ障害
相対的に短絡容量の小さい地点から、アーク炉負荷に電力供給する場合、アーク電流が不規則に変動し、供給変電所の母線電圧が影響を受け、他の一般需要家の照明器具・電動機・電子機器に障害を与える。
(2) 対策
@ 電源側対策
電源側に直列コンデンサを挿入して電源インピーダンスを小さくする。
アーク炉用の専用送電線・変圧器を採用して、短絡容量の大きい系統から給電する。
補償変圧器(ブースタ)を設置する。
A 負荷側対策
アーク炉変圧器一次側に直列可飽和リアクトルを挿入してアーク電流の急増を抑制する。
定電圧特性を持つ並列飽和リアクトルを設置する。
同期調相器やSVCで無効電力を補償する。
3. 配電設備
(1) 支持物
@ 木柱
腐朽菌・白アリによって腐朽する。
せん孔スラスト腐朽判定器により、ドリル軸への反力で劣化診断される。
A コンクリート柱
耐久性、設計荷重の増加により、現在の主流となる。
根入れは、15m以下は6分の1、15m超は2.5m以上。
鋼材の腐食膨張から、コンクリートのひび割れ・剥離が起こる。
テストハンマーで表面のもろさを点検する。
シュミットハンマーにより、跳ね返り距離から劣化診断される。
(2) がいし
@ 高圧・低圧がいし:充電部を直接支持する。
a.高圧がいしの種類
中実がいし:耐吸湿性・長期耐圧性に優れる
ポリマがいし:シリコンゴムを使用する
ZnO素子内蔵がいし:耐雷性能
b.高圧がいしの使われ方
高圧耐張がいし:電線の水平角の大きい箇所、引きとめ箇所
高圧ピンがいし・高圧中実がいし:引き通し電線、分岐線の支持
A 玉がいし:支線の絶縁に用いられる。
(3) 柱上変圧器
一般に3〜100kVAの屋外油入自冷変圧器が用いられる。
絶縁に使われるセルロース系絶縁紙には、吸湿性があるので、経年劣化する。
(4) 柱上開閉器
作業時の区分・故障時の切り離しに使われる。負荷電流の開閉を行い、短絡電流は回路できない。
絶縁油を使用する開閉器は柱上に施設してはならない。(雷撃時の油の飛散を回避)
真空開閉器・気中開閉器・ガス開閉機(SF6)が使われる。
操作は、手動式・自動式ともに存在する。
(5) 高圧カットアウト
変圧器の一次側の開閉器として使用される。
変圧器の過負荷時・内部短絡時に、高圧配電線から変圧器を切り離す(高圧ヒューズ内蔵)。
箱型カットアウト:ヒューズ筒のついた蓋の開閉により、電路の開閉ができる。
円筒型カットアウト:ヒューズ筒の取りつけ・外しにより、電路の開閉ができる。
蓋や円筒は磁器製。
※ 放出型(タイムラグ型)ヒューズ:短時間過大電流で溶断しない高圧ヒューズ。
電動機の始動電流や雷サージでは溶断させない。
(6) 架空地線
誘導雷対策として施設される。
電線の雷誘導電圧と、架空地線の接地点からの反射波による誘導電圧は、打ち消し合う。
電線との結合率を大きくする。
接地抵抗は低くする必要はない。
(7) 配電線
@ アルミ線
硬銅線より抵抗率が大きいので、電線が太くなる。風圧荷重が大きい。
引張力が小さいので、たるみを大きくする。
腐食されやすいので、耐食性のあるアルミニウム合金線を使用する。
銅線と接続する場合には、アルミ線の下側にする。
A 絶縁電線・ケーブルの絶縁物
雷のフラッシオーバで、絶縁被覆が貫通した場合、絶縁被覆ためにアーク点が移動できず、続流が集中し、導線溶断事故が起きやすい。
4. 配電線保護
(1) 事故点捜査方式
自動区分開閉器と変電所引き出し口遮断器の再閉路動作と協調を取る。
@ 時限順送式:開閉器動作の時限協調
A 信号方式:有線・配電線搬送
(2) 遠隔監視方式
1か所で集中監視制御をおこなう。
@ 配電線搬送方式
A 信号線搬送方式
B 無線搬送方式
(3) 静止型地絡方向継電器(DGリレー)
零相電圧・零相電流値で動作する。
継電器で検出できる地絡抵抗の最大値は、
対地静電容量の大きい系統では零相電圧の値で制限される。
対地静電容量の小さい系統では零相電流の値で制限される。