送電線路の機械的特性
1. 電線の振動
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振動周波数 |
振幅 |
構成 |
微風振動 |
10〜60Hz |
〜3cm |
単導体 |
コロナ振動 |
1〜3Hz |
9〜10cm |
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サブスパン振動 |
1〜2Hz |
10〜50cm |
多導体 |
ギャロッピング |
0.2〜0.5Hz |
〜15m |
(1) 微風振動
緩やかで一様な風が電線に直角にあたると、電線の風下側にカルマン渦を生じ、電線に揚力が与えられ、定常的な振動を発生する。
微風振動により、電線支持点のクランプ部分で繰り返し応力を受けて、疲労により素線が断線する。
長径間で、電線が太くて軽い場合に発生しやすい。
電線の張力が大きい場合に発生しやすい。
対策
@ ダンパ:電線支持点付近に取り付けられ、電線の微風振動を吸収する。
A アーマロッド:クランプ部分の電線に巻きつけて、上下方向の曲げ疲労を防ぐ。
B フリーセンタ型懸垂クランプ
(2) コロナ振動
電線の下面に水滴が付着し表面の電位傾度が高くなると、コロナ放電が発生し、荷電した水の微粒子が射出され、電線はその反動で上向きの力を受けて、振動が励起される。
無風で降雨がある場合に発生しやすい。
対策
懸垂がいしに適当な重錘をつるす。線路の機械的共振周波数を変える。
(3) サブスパン振動
風速が10m/sを超えて、スペーサとスペーサの間(サブスパン)の交友振動数と一致した場合に、自励振動を発生する。
サブスパン振動により、スペーサのボルトの緩み、スペーサの可動部の摩耗が発生する。
多導体のみに発生する。
平坦で風をさえぎるものがない場所で発生しやすい。
対策
素導体の間隔を適切にするスペーサ配置を行う。
素導体に高低差をつける。
(4) ギャロッピング
着氷雪によって、断面が非対象でなくなった電線に水平風が当たると、揚力を生じ、自励振動を発生する。
相関短絡を起こし、再閉路に成功しても再度短絡を起こしやすい。
スペーサを損傷したり、がいし金具の疲労強度に影響を与える。
多導体や太い電線で発生しやすい。
振幅が大きいので電線張力変動も大きく、また、持続時間も長い。
対策
ギャロッピング防止ダンパ(カウンタウェイト)で、風による振動エネルギーを吸収する。
相間スペーサを取り付ける。
(5) ストリートジャンプ
氷雪付着により電線のたるみが増加し、その氷雪が脱落するときに電線が跳ね上がり、振動を発生する。
混触や短絡事故を起こす。
電線が軽く、弾性が大きい場合に発生しやすい。
対策
張力を大きくとるため、長径になることを避ける。
電線を水平配列にし、オフセットを増す。
2. 電線のたるみ
(1) たるみ
たるみD は経間距離S の2次式で表わされ、
より、
また、導関数は、
で、この傾きは、電線の重量と張力の関係に等しいから、
(2) 電線長さL とたるみの関係
経間距離を2分の1にすれば、たるみも2分の1になる。
(3) 電線の線膨張
α :線膨張係数、t :温度上昇
(4) 両端の高低差がある場合のたるみ
電線を最下点で2分割し、 とした場合に、
それぞれのたるみは、
3. 荷重と張力
(1) 支線の張力
支線が電柱に対してθ の角度の場合、電線張力P と支線張力T の水平成分は等しいので、
より、
(2) 2本の電線と支線の取りつけ高さH が異なる場合の、支線の張力
電柱根元を支点としたモーメントから、
(3) 電柱の傾斜がφの場合の支線の張力
より、
(4) 安全率がa の場合、支線張力の強度設計値T0
4. 支持物(鉄塔)
(1) 支持物へかかる荷重
@ 垂直荷重
支持物の自重、電線・がいしの重量、着氷雪の重量、電線張力の垂直分力
A 水平横荷重
支持物・電線・がいしに加わる風圧荷重、水平角荷重、断線で不平衡張力が生じた場合のねじり力
B 水平縦荷重(線路方向)
支持物への風圧荷重、断線した場合の不平衡張力
(2) 支持物の強度
常時想定荷重、または異常時想定荷重の3分の2のいずれか大きい荷重に耐えうる強度
常時想定荷重:断線を考慮しない荷重
異常時想定荷重:断線を考慮に入れた荷重