地中送電線

 

1. 地中送電線(ケーブル)

(1)  架空送電線との特徴比較

ž   対地静電容量が大きい。

ž   フェランチ効果が顕著に出る。

ž   無負荷送電線を遮断し、再投入する場合に、大きな過渡的開閉過電圧が発生する。

ž   通信線と接近して敷設されるので、電磁誘導障害が大きくなる。

 

(2)  地中送電線の電力損失

@ 導体中の抵抗損

A 絶縁体中の誘導損

ケーブルの絶縁物内で発生する損失で、架空送電線には存在しない。

ケーブルに交流電圧V が加わった時、充電電流IC による誘電損失WD は、微小な有効成分IR から

 

 

誘電損は、電圧の2乗に比例する。

 

 

また、この場合の誘電正接は、CRの並列回路なので、

 

なお、三相3線式ケーブルの充電容量は、

 

B 導体中のシース損(渦電流損+シース回路損)

渦電流損は、金属シース内に発生する。

シース回路損は、線路の長手方向に流れる電流によって発生する。

送電電流が増加すると、シース損も増大する。

ž  3相回路に3心ケーブルを用いると、シース損を小さくできる。

ž  クロスボンド方式は、3区間でシース回路をねん架することにより、シース回路損を低減できる。

 

 

(3)  地中ケーブルの許容電流

抵抗損、誘電損、シース損による温度上昇や、環境温度との温度差によって、許容電流が決まる。

ž  導体抵抗が小さいほど、許容電流が大きい(→極低温ケーブル・超電導ケーブル)。

ž  誘電損が小さいほど、許容電流が大きい(→CVケーブル)。

ž  ケーブル同士の間隔が大きく、ケーブルの条数が少ないほど、許容電流が大きい。

ž  埋設深さが深いほど、土壌が冷えるので、許容電流が大きい。

ž  土壌湿度が高いほど、放熱効果が大きいので、許容電流が大きい。

ž  ケーブルを冷却する方式は、許容電流が大きい(→導体内を油冷・水冷する導体内部直接冷却、ダクトで油冷・水冷する導体外部強制冷却)。

ž  ケーブル自体の許容温度が高いほど、許容電流が大きい(→CVケーブル)。

 

@ 瞬時許容電流:系統故障時の瞬時電流に適用

A 短時間許容電流:一次的な過負荷送電の場合に適用

B 常時許容電流

ケーブル導体の常時許容電流I は、ケーブルの心線数n 、ケーブルの導体抵抗r 、ケーブル導体の許容温度、土壌の熱抵抗RTH どによって決まる。

 だから、

T1:ケーブルの最高許容温度、TD:誘電体損による温度上昇、T2:土壌の温

 

 

(4)  地中送電線の敷設方式

@ 直接埋設式

コンクリート製トラフに収めて、直接埋設する。

一般の場所では60cm、車の通る場所では1.2m以上の深さに埋設する。

ž  工事費が安く、工期も短い。

ž  熱放散が最も良好。

ž  外傷を受けやすい。

ž  保守点検、故障復旧、増設、撤去が困難。

 

A 管路式

ケーブルをマンホールから管路に引き入れる。

マンホール部分でケーブル同士を接続する。

ž  増設、撤去が容易。

ž  保守点検、故障復旧が比較的容易。

ž  外傷を受けにくい。

ž  工事費が高く、管路のわい曲にも制限を受ける。

ž  熱放散が悪いので、管路内の条数が多いと、送電容量に制限を受ける。

 

B 暗きょ式

暗きょ内の、棚・床上・トラフにケーブルを敷設する。

下水やガスとの共同溝を構築する場合もある。

ž  熱放散が比較的良好なので、送電容量も大きくなる。

ž  条数が多い電線の敷設に対応できる。

ž  保守点検、故障復旧が容易。

ž  工事費が高く、工期も長い。

 

 

2. 地中送電線の事故・防災

(1)  地中送電線の事故

短絡事故は少なく、ほとんどが地絡事故である。

原因としては、

ž  接続部施工時の外傷・異物混入

ž  異常電界

ž  湿気の侵入

ž  ボイド・間隙の発生

ž  水トリーの進展等による経年劣化

 

(2)  事故点の標定

@ マーレーループ法

健全相と故障相を短絡し、ホイートストンブリッジの原理を利用して、事故点の距離x 求める。

しゅう動抵抗には1000個の目盛りが振ってあり、目盛りがa の場合、

l :電線の長さ

 

A パルスレーダ法

故障相に電圧パルスを送り、事故点からの反射パルスを検知して、パルスの往復時間t から、事故点x 求める。

v :サージ伝搬速度

 

B 静電容量法

故障相の静電容量CF と、健全相の静電容量C を比較し、事故点x を求める。各々の静電容量は、健全な部分の長さに比例するので、

 

(3)  地中送電線の雷サージ

架空送電線に接続された地中送電線(ケーブル)で、架空送電線に直撃雷があった場合、ケーブルに雷サージが侵入し、ケーブル両端で反射・往復し、ケーブル内部の電位が架空送電線の電位よりも高くなる。

ž  地中送電線のこう長が短いほど顕著になる。

ž  異常電圧が送電線路のBIL(基準衝撃絶縁強度)を超えることが予測される場合には、避雷器を設置する。

 

(4)  地中送電線等の地中埋設金属の腐食

@ 電気的腐食

直流電気鉄道の軌条から漏れる電流により、埋設ケーブルの金属体がイオンとなって流出し、金属体に穴が開く(電食)。

対策として、

ž  レールを負極にする。

ž  レールからの漏れ電流を少なくする。

ž  金属体を大地から絶縁し、レールとの間に電流が流れないようにする。

ž  選択排流器(整流器)を接続する、または強制排流法を採用する。

 

A 化学的腐食

石灰・腐食性塩類を含んだ地下水と接触し、金属体表面の局部電池作用によって、腐食する。

 

 

(5)  地中送電線の火災対策

ž  難燃性ケーブルの採用、または不燃シールを巻き付ける。

ž  ケーブルを防災トラフに収容し、防火区画を設ける。

ž  誘導灯を設置して、避難経路を確保する。

ž  煙感知器、消火設備、防火扉を設置する。

 

(6)  暗きょ(洞道)内の酸欠防止

ž  換気には、十分配慮し、酸欠測定装置を設置する。

ž  酸素マスクを設置する。

 

 

3. ケーブル

(1)  ケーブルの種類

@ OFケーブル(油入りケーブル)

シース内部に油通路を設け、低粘度の絶縁油を充填する。

油槽から常時大気圧以上の圧力を加え、絶縁紙を完全浸油状態に保つ。

ž  絶縁体中の電圧ギャップが発生しないので、電位傾度が高い。

ž  絶縁層は薄く、ケーブル外径が小さい。

ž  油を使っているので、接続・敷設の面で扱いにくい。

ž  66kV以上で広く適用。500kVケーブルとしても採用。

ž  金属シースはアルミ被・鉛被。

アルミ被は軽量で、機械強度が高いので油圧を高くでき、電気抵抗が小さいので遮蔽効果も大きい。

鉛被は耐腐食性に優れるが、耐振動疲労特性が悪く、シースひずみを大きくとれない。

 

 

A CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)

ポリエチレンは絶縁性能に優れるが、熱に弱い。

架橋ポリエチレンは、耐熱性に優れる。

絶縁物の内側と外側に半導電層を設けて電位傾度を緩和している。

金属遮蔽層は地絡電流帰路としての、電流容量を有する。

ž  たわみ性に富む。

ž  最高許容温度が高い(90)ので、電流容量が大きい。

ž  耐電圧が高い。

ž  誘電正接tanδが小さいので、誘電損が小さい。

ž  比誘電率が小さいので、充電電流が小さい。

ž  外側が金属シースでは無いので、軽量で取り扱いが容易。

ž  OFケーブルに比べて軽量で、油も使っていないので、保守・接続が容易。

ž  油を使わない固体絶縁なので、高低差・気圧差のある場所でも敷設が可能。

ž  154kV以下のほか、500kVでも採用される。

 

水トリー

CVケーブルの絶縁体中に侵入した水分と、電界との共存下においてトリー状の白濁部ができ、絶縁障害を起こす。tanδと漏れ電流が増大する。

ž  界面トリー:内部・半導電層を起点として発生する。

ž  ボウタイトリー:絶縁体中のボイド・異物を起点として発生する。

 

 

B CVTケーブル(トリプレックス型CVケーブル)

単心のCVケーブル3条をより合わせたケーブル

ž  3心共通シースケーブルよりも、電流容量が10%大きく、重量も5%軽い。

ž  曲げやすく、端末処理・直接接続も容易。

 

C SLケーブル(ソリッドケーブル)

単心鉛被ケーブル3条をより合わせたケーブル

 

D BNケーブル(ブチルゴムケーブル)

より線をブチルゴムで被覆したケーブル

 

(2)  CVケーブルの対地静電容量

ガウスの法則から、誘電ε、電界E、表面積S の電荷は、

 

導体半r とその外側の絶縁体半径R との電位差V

 

 

(3)  絶縁劣化測定

@ 直流高電圧法

ケーブルに直流高電圧を印加した時の電流を測定する。吸湿や汚損により絶縁劣化すると、漏れ電流が増大する。

測定電流=充電電流+吸収電流+漏れ電流

 

充電電流:変位電流。短時間で減衰する。

吸収電流:絶縁物の性質を示す。減衰に時間がかかる。

漏れ電流:絶縁抵抗で決まる。時間にかかわらず一定である。

 

 

劣化、吸湿すると、成極指数が1に近づく。

 

A 部分放電法

部分放電の有無、放電開始電圧、放電電荷量から、絶縁状態を判定する。

 

 

 

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