送電線路の電気的特性
1. 送電線の特性
(1) 長距離送電線(分布定数回路)
抵抗、作用インダクタンス、作用静電容量、漏れコンダクタンスで構成された分布定数回路として取り扱う。
各値は線路導体の種類・構造と、導体の幾何学的配置よって定まる。電気的条件、気象条件の影響は、比較的小さい。
分布静電容量の影響
無負荷送電線を充電する場合、フェランチ効果や自己励磁現象が発生する。
重負荷時には、無効電力を供給し、電圧の低下を防ぐとともに、送電線の力率を改善し、電力損失を減少させる。
(2) 短距離送電線(集中定数回路)
こう長が20〜30km以下の短距離送電線では、抵抗、作用インダクタンスが1か所に集中した集中定数回路として取り扱う。
(3) 線路定数
@ 電線1条当たりの抵抗r [Ω/km]
材質(抵抗率ρ )、断面積S とする。
温度が高くなると導体抵抗値は増大する。
表皮効果によって、交流では電線表面部に集中して電流が流れるので、交流の抵抗値のほうが直流よりも高い。
表皮効果は、周波数f、導電率σ =ρ-1、比透磁率μ に比例して大きくなる。
したがって、表皮深さδが小さいほど、表皮効果は大きい。
また、導体断面積が大きいほど、表皮効果が大きくなる。
A 電線1条当たりの作用インダクタンスL [mH/km]
比透磁率μs =1、電線半径r [m]、線間距離D [m]とする。
対称三相交流が流れた場合の自己インダクタンスと相互インダクタンスを考慮した、一相あたりのインダクタンスを表す。
架空電線は1.3mH/km、ケーブルは0.2〜0.4mH/km。
B 電線1条当たりの作用静電容量C [μF/km]
比誘電率εs は架空電線で1、ケーブルで3.5、電線半径r [m]、線間距離D [m]とする。
架空電線は0.01μF/km、ケーブルは0.5μF/km。
3心ケーブルにおける一条当たりの作用静電容量
Δ結線の線間静電容量Cmより、Y結線の相間静電容量は3Cm
合成容量は、C0と3Cmの並列接続だから、
各導体間の静電容量Cm、各導体の対地静電容量C0
2. 線路の四端子定数
ただし、
なお、無負荷時には、 となる。
@ T型行列
A Π型行列
3. 線路の電圧降下
(1) 1相分のベクトル図
送電端電圧(相電圧)は、
(2) 電圧降下
送電端電圧(線間電圧)は、
短距離送電線では、虚数部分を無視できるので、
電圧降下は、
4. 電力
(1) 電圧降下との関係
(2) 複素電力表示
受電端電圧
電流
ただし、
電流の共役複素数
受電電力=有効電力+無効電力
受電側の負荷をR+jX とすれば、
(3) 受電側有効電力の近似(電線の抵抗を0とした場合の近似)
受電側の有効電力(三相分)は、
送電線路では、 なので、ベクトル図は以下の通り。
一相分の有効電力は、
三相分の有効電力は、
受電側有効電力は、電圧の積に比例し、線路リアクタンスに反比例する。
(4) 電線路の電力損失
抵抗損は、
有効電力が同じで、力率が改善された場合、電流が減るので、電力損失も減少する。
電力損失率
5. 短絡容量
三相3回線式において、基準容量をPn とした場合、短絡容量は、
三相短絡電流は、
パーセントインピーダンス
パーセントインピーダンスが小さいと、短絡容量が大きくなり、安定度が良くなる。ただし、三相短絡時の短絡電流は大きくなる。
6. 線路の不連続点における反射・透過
特性インピーダンスがZ1 、Z2 の線路の接続点において、
入射波の電圧・電流を、e1 ・i1 、
反射波の電圧・電流を、e1’ ・i1’ 、
透過波の電圧・電流を、e1 ・i1 とすると、
反射に関して、
透過に関して、
@ Z1 = Z2 のとき、反射率r が0となり、反射を生じない(整合)。
A Z2 = 0 のとき、接地端となり電位は0、透過する電流は入射波の2倍になる。
B Z2 =∞ のとき、開放端となり電位は2倍になり、透過する電流は0になる。