送電方式
1. 交流送電
(1) 交流送電方式が主流であることの理由
三相同期発電機は、構造が簡単・強固で、高効率なので、発電所に採用されている。
三相3線式は中性点回路を省略でき、最も効率良く送電できる。
電圧の変成が容易で、高効率変換が可能。
電圧・電流が変動し、零点を通るので、負荷電流や事故電流を遮断することが容易である。
現状、家電などの負荷の大部分が、交流方式。
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送電電力 |
電線一条当たり |
直流送電方式(2線式) |
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交流送電方式(単相2線式) |
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交流送電方式(二相3線式・V結線) |
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交流送電方式(三相3線式・Y結線) |
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(2) 定電圧送電方式
一般的に採用されている。
送受電電圧を負荷状態とは無関係に、それぞれ一定に保つように運転する。
負荷の大きさと力率に応じて、調相設備から無効電力を供給する。
(3) 送電容量
三相交流送電の送電容量(有効電力)Pの最大値は、理論上、系統電圧(送電電圧Vs、受電電圧Vr)と線路リアクタンスXに依存する。
実際は、電線の許容電流などにも依存する。
2. 直流送電の特徴
(1) 利点
同期化力による安定度の問題がないので、送電線の電流容量の限度まで送電容量を高められる。
無効電流・表皮効果による損失がなく、さらにケーブルでは誘電損がないので、送電損失が少ない。
短絡容量を増大させることなく、異周波数交流系統の非同期連係が可能。
線間・対地静電容量に対する充電電流が流れず、フェランチ効果も無いので、ケーブルの場合に特に有利。
インダクタンスによる電圧降下がない。
電圧最大値と実効値が等しいので、絶縁設計上(最大電圧で決まる)有利。
変換器が静止器なので、高速潮流制御が容易となり、安定度向上・周波数調整に貢献。
交流に比べて条数が少なくて済むので、電線一条当たりの送電効率が大きく、経済的。
※フェランチ効果:軽負荷時に、受電端電圧が送電端電圧より大きくなる現象。
(2) 欠点
変換器から高調波を発生するので、フィルタなどの高調波・高周波障害対策が必要。
無効電力の送電・受電ができないので、大容量の無効電力供給設備が必要。
電圧の変成が簡単にできないので、構成の自由度が低い。
直流遮断は容易ではない(交流のような電流の零点がない)ので、大容量の高電圧遮断器が造れず、多端子の系統構成ができない。
静電誘導の影響が大きく、がいしの汚損が激しくなる。
大地帰路方式では、電食が発生する(変電所付近の大地で電流が流出し、地下水によって金属体が腐食される)。
大地帰路方式では、海上の船舶の磁気コンパスへ影響が出る。
交直変換設備が高価なので、長距離送電線でなければ不経済。
3. 直流送電の採用箇所
長距離の大容量送電を行うためには、電力損失(抵抗損)を減らし、高電圧化が必要となる。
そのため、現状では、電圧の昇降変成の容易な交流方式が主流である。
直流送電の利点を生かした採用箇所としては、
@ 大容量長距離架空送電
A 大容量海底ケーブル送電
そのほか、
B 異周波数数系統連係設備
C 系統短絡電流の抑制(短絡容量の抑制)
D 非同期連係設備
4. 直流送電設備の構成
送電端で、交流電力を直流変換し、送電する。受電端で再び交流に戻す。
送電端→遮断器→変圧器→交直変換器→直流リアクトル
→直流線路
→直流リアクトル→交直変換器→変圧器→(調相設備・高調波フィルタ)→受電端
交直変換設備
高圧電流光トリガサイリスタを使用した、直接光トリガ方式が採用されている。
調相設備(分路リアクトル・電力用コンデンサ等)
変換器の点弧位相制御のために力率が低下するので、それを補償する。
BTBシステム
非同期連係設備や異周波数系統連係設備では、交直変換器の間は送電線が無い状態で接続されている。
5. サイリスタ(電力用半導体素子)周波数変換装置
(1) 利点
運転・保守が容易
大電力を効率良く、精密に制御可能。点検・保守作業が少ないので、無人遠隔制御が可能。
高信頼性
静止器なので故障しない。
変換容量の自由度
サイリスタを直並列に接続するだけで、耐電圧や電流容量の変更が可能。
(2) 欠点
保護装置が必要
サイリスタは過負荷に弱いので、異常電圧を瞬時に遮断する必要がある。
直並列保護回路が必要
特定の素子に過負荷が加わらないように、各素子の分担電圧・電流が均等にする保護回路が必要となる。
高調波障害対策が必要
高調波を発生するので、交流フィルタ・シールドなどの対策が必要となる。
整流器についても、
@ 整流器のパルス数を増加して、きめの細かい制御をする。
A 整流器の位相をシフトさせることにより、各相の制御する時間を変える。