接地と地絡
1. 中性点接地方式
(1) 目的
アーク地絡等を要因とする異常電圧の発生を防止する。接地インピーダンスが小さいほど、異常電圧は小さくなる。
一線地絡事故時に生ずる、健全相の対地電圧の上昇を抑制する。それによって、機器の絶縁レベル(変圧器の段絶縁など)や、避雷器の定格電圧を低く抑えることができる。
地絡事故時に故障区間を除去するための地絡リレー(保護継電器)の動作に必要な電圧・電流を確保する。接地インピーダンスが小さいほど、地絡電流によるリレー動作が確実となる。
(2) 注意
異常電圧の防止という観点からは、接地抵抗は小さいほうが良いが、気をつけなければならない点もある。
抵抗値が低いほど、大電流が流れるため、通信線への誘導障害が大きくなる。
抵抗値が低いほど、大電流が流れるため、遮断器や機器に与える影響が大きい。高速遮断が必要となる。
接地抵抗が低いと、安定度が低下する。
(3) 種類
|
接地抵抗 |
地絡電流 |
適用電圧 |
用途 |
直接接地 |
0 |
最大 |
187kV以上 |
超高圧送電線 |
抵抗接地 |
R |
中 |
66〜154kV |
高圧送電線 |
消弧リアクトル接地 |
jωL |
0 |
66〜154kV |
雷害の多い地方 |
非接地 |
∞ |
小 |
33kV以下 |
短距離高圧配電系統 |
@ 直接接地方式
異常電圧の防止、絶縁設計の点では最も有利だが、通信設備への誘導障害は大きくなる。高速遮断も必要となる。
A 抵抗接地方式
大ケーブル系統に抵抗接地方式を採用する場合には、中性点抵抗と並列に補償リアクトルを設置する。
大ケーブル系統では、ケーブルの対地静電容量が大きく充電電流は大きいので、事故電流値とその位相角が大きくなり、保護継電器の適用が難しくなる。
大ケーブル系統の事故電流は電圧が90°進み、事故点から遠い点での零相電圧が大きくなるので(フェランチ効果)、健全相の電圧上昇が大きくなる。
補償リアクトルは、ケーブルの充電電流による事故電流を相殺させる。
B 消弧リアクトル接地方式
リアクトルを流れる誘導性電流と、送電線の容量性電流が互いに打ち消し合い、一線地絡電流の大部分が瞬時に消弧される。
各相の送電線の対地静電容量が等しい場合に、地絡電流を0にする条件は、
各相の送電線の対地静電容量が不平衡の場合には、直列共振を起こす。
特に、共振条件
を満たす場合には、地絡事故がなくても、リアクトル−中性点−送電線(対地静電容量)の直列回路のインピーダンスは純抵抗成分のみとなってしまうので、過大な電流がリアクトルに流れ、中性点電位が異常上昇する。
また、消弧リアクトル接地方式においては、たとえ永久地絡になっても、送電自体は安定に継続できる。
ただし永久地絡を放置すれば、
通信線に誘導障害を起こす。
健全相の対地電圧が正常時の 倍(=線間電圧)になるため、二重地絡に移行し被害が拡大する恐れがある。
C 非接地方式
非接地の場合、一線地絡事故時には、健全相の対地電圧が正常時の 倍(=線間電圧)になる。間欠アークが発生し、異常電圧を発生する恐れがある。
2. 一線地絡
(1) 一線地絡電流
テブナンの定理より、
回路網の途中にある任意の端子に、インピーダンスZg を接続した場合、インピーダンスに流れる電流(一線地絡電流)は、
E :インピーダンスを接続する前の端子間開放電圧(相電圧)
線間電圧Vとの関係は、
Z :端子から見た回路網のインピーダンス(対地静電容量3Cと接地インピーダンスZN の並列接続)
Zg :地絡事故では、地絡抵抗Rg(完全地絡ではZg =0になる)
@ 直接接地方式
A 抵抗接地方式
B 消弧リアクトル接地方式
C 非接地方式
(2) 中性点電位
一線地絡時の中性点電位
直接接地方式では、中性点電位は0になる。
3. 対地静電容量が不平衡の場合の中性点電位
(1) 消弧リアクトル接地方式で、対地静電容量が不平衡の場合に、地絡電流が0になった時の中性点電位(残留電圧)
対地静電容量による各相の充電電流は
中性点を流れる電流は、
ZN :接地インピーダンス
中性点電位は、
∵ベクトルオペレータ
(2) 非接地方式で、対地静電容量が不平衡の場合の中性点電位
非接地なので、中性点を流れる電流は、0になる。
中性点電位は、
ただし、送電線が十分にねん架されていて、送電線の対地静電容量が平衡(CA=CB=CC )であれば、A・Bともに中性点電位は0になる。