変電理論
1. 巻数比
巻数比aと電圧・電流の関係
(1) 一次・二次端子電圧の比(変圧比)=一次・二次誘導起電力の比
(2) 一次・二次電流の比(変流比)
2. インピーダンス
(1) 抵抗
理想変圧器では巻線抵抗(銅損)は存在しない。
実際の変圧器では巻線抵抗(銅損)が存在する。
(2) リアクタンス
理想変圧器では、磁束に漏れがなく、全磁束が一次・二次巻線と鎖交する。
実際の変圧器では、主磁束に対し、一次・二次漏れ磁束が存在する。
主磁束にかかわるリアクタンスのほかに、一次漏れリアクタンス・二次漏れリアクタンスが存在する。
主磁束:一次・二次巻線と鎖交する磁束。変圧器の起電力を誘導する。
一次漏れ磁束:一次巻線とだけ鎖交する磁束。一次巻線だけに起電力を誘導する。
二次漏れ磁束:二次巻線とだけ鎖交する磁束。二次巻線だけに起電力を誘導する。
(3) インピーダンス=巻線抵抗とリアクタンスの総和
理想変圧器ではインピーダンス=リアクタンス
実際の変圧器ではインピーダンス≒リアクタンス
したがって、変圧器を受電端に接続すると、遅れ電流が流れ、送電線の進相電流を打ち消す。
※ 変圧器のインピーダンスを小さくするには、漏れリアクタンスを小さくする。
漏れ磁束に対する磁気抵抗を増す:巻線間の空隙を小さくする
主磁束を増やす:鉄心断面積を大きくする・巻線数を減らす(鉄機械)
3. 百分率インピーダンス
変圧器の百分率インピーダンスは、定格容量に比例する。
定格容量:
定格相電圧:
複数の変圧器に関する計算をするときは、基準容量に統一して換算する。
三相短絡事故の短絡電流を求める(Y-Y-Δ結線)
@ 電源から短絡点までの合成インピーダンス%Zを求める。
一次-二次・二次-三次・三次-一次間のインピーダンスから、一次・二次・三次インピーダンスを求める。
百分率インピーダンスは基準容量Pnに換算する。
母線のインピーダンスは、基準容量÷母線の短絡容量から求める。
A 定格電流と%Zから三相短絡電流を求める。
ただし、定格電流は、
4. 変圧器の並行運転
負荷分担は変圧器の容量に比例し、百分率インピーダンスに反比例する。
二次側電圧が異なる場合、循環電流が流れる。
5. 対称座標法
零相電流:同じ大きさ・同じ位相の単相電流
中性点接地のあるY結線に流れる。中性点接地のないY結線には流れない。
Δ結線では環流する。
正相電流:同じ大きさ・a-b-cの順に120°ずつ位相が遅れてくる平衡三相電流
逆相電流:同じ大きさ・a-c-bの順に120°ずつ位相が遅れてくる平衡三相電流
Y結線に流れる(各相の電流和が0のため)。
一線地絡事故の地絡電流(Y-Y-Δ結線、二次のみ中性点接地、二次側の一線地絡)
@ 零相インピーダンスを求める。
二次-三次間インピーダンスから、零相インピーダンスを求める。
零相電流は、三次側Δ結線と中性点接地した二次側Y結線間に流れる。
A 正相・逆相インピーダンスを求める。
一次-二次間インピーダンスから、零相インピーダンスを求める。
正相・逆相電流は、一次-二次間のY-Y結線間に流れる。Δ結線には流れない。
B 一線地絡電流を求める。
6. 損失
変圧器には機械損がない(回転しない)。
(1) 負荷損:負荷電流による損失。接続された負荷に電流が流れると生じる。負荷損≒銅損。
銅損=一次巻線・二次巻線の抵抗損
(2) 無負荷損:励磁電流による損失。一次電圧が加わると、負荷が接続されていない場合でも生じる。負荷に無関係。無負荷損≒鉄損。
鉄損=渦電流損+ヒステリシス損(ともに鉄心)
@ 渦電流損Pe:鉄損の20%を占める。鉄心内の誘起電圧によって生じる渦電流の、鉄板による損失。
渦電流損は、鉄板の厚さの2乗と印加電圧の2乗に比例し、抵抗率に反比例する。
渦電流損は、印加電圧が一定ならば、周波数に無関係である。
Peは、だから、
t:鉄板の厚さ, ρ:磁性体の抵抗率, Bm:最大磁束密度, f:周波数
E:印加電圧, S:鉄心の断面積, Ke:比例定数
A ヒステリシス損Ph:鉄損の80%を占める。磁束の向きに鉄心の磁区が方向を変えるときに生じる損失。ヒステリシスループ(1サイクル)の面積に比例する。
ヒステリシス損は、鉄板の厚さに無関係である。
ヒステリシス損は、印加電圧が一定ならば、周波数の増加に対し、減少する。
スタインメッツの実験式より、
(3) 負荷率と損失の関係
変圧器の負荷が全負荷の1/nの時、銅損は1/n2になるが、鉄損は変わらない。
(4) 効率と損失の関係
(5) 定格容量と損失の関係
定格容量(皮相電力)は、損失による温度上昇で制限される。
7. 短絡比(鉄機械と銅機械)
@ 鉄機械:鉄心が大きい。鉄心から損失熱を発する。大形で重い。高価。
A 銅機械:コイルの巻数が多い。コイルから損失熱を発する。小型で軽量。
|
短絡比大 鉄機械 |
短絡比小 銅機械 |
インピーダンス |
小 |
大 |
短絡容量 |
大 |
小 |
安定度 |
良い |
悪い |
電圧変動率 |
小 |
大 |
(1) インピーダンス
百分率インピーダンスは短絡比の逆数である。
(2) 短絡容量
@ 鉄機械:インピーダンスが小さいと電流が流れやすいので、短絡時の電流が大きくなる。
A 銅機械:インピーダンスが大きいと電流が流れにくいので、短絡時の電流が小さくなる。
(3) 安定度
@ 鉄機械:通常運転時のインピーダンスが小さいと、安定した運転が可能となる。
A 銅機械:通常運転時のインピーダンスが大きいと、安定した運転が不安定になる。
(4) 電圧変動率
電圧変動率εは、全負荷時と無負荷時とにおける、二次端子電圧の変動の大きさを表す。
p:百分率抵抗降下, q:百分率リアクタンス降下, cosθ:力率
8. 調相設備
変圧器二次側にコンデンサをつなぐ場合
変圧器の一次-二次間インピーダンス(リアクタンス)
コンデンサの補償するべき電圧降下分
コンデンサの供給するべき無効電力[Var]
9. 遮断器
より、
遮断容量は、