変電所全般
1. 変電所の構成
電圧の変成、電力の集中・分配(電力潮流の調整)、送配電線の保護(保護継電装置)を行う。
(1) 変圧器(T)
電圧の変成を行う。発電所では昇圧用、変電所では降圧用を用いる。
負荷時タップ切換変圧器
負荷電流が流れている状態のままで、タップを切り替えることができる。
(2) 開閉装置(遮断器・断路器・負荷開閉器・ヒューズなど)
@ 遮断器(CB)
通常時:電力の送電・停止・切換を行う。負荷電流を遮断する。
事故時:回路の自動遮断を行う。故障電流を遮断する。
A 断路器(DS)
保守点検時:送配電線、変圧器、遮断器を切り離す。
電流の通じていない回路を開閉するのみで、故障電流・負荷電流の開閉はできない(遮断能力は無い)。
(3) 母線(BUS)
電力の集中・分配を行う電線。点検時でも変電機能が継続できるように二重化されている。
流通電力の大きな母線では、アルミパイプが採用されている。
(4) 保護継電器
短絡や地絡故障に伴う過大な電圧・電流、周波数変化を検出し、異常のないところを遮断しないように、当該の遮断器に指令を出す。
(5) 変成器
直接測定するのが不可能な高電圧・大電流を、測定可能な電圧・電流に変成する。保護継電器の入力として使われる。
@ 計器用変圧器(VT)
二次側を短絡してはならない。
A 計器用変流器(CT)
一般に定格二次電流は5A。二次側を開放してはならない。
(6) 調相設備
電圧調整を行い、電力損失の軽減を図る(無効電力を調整する)。
@ 電力用コンデンサ
重負荷時に進相電力を供給する。
A 分路リアクトル
軽負荷時に遅相電力を供給する。
(7) 避雷器(LA)
雷サージ電流のみ大地に流し、商用周波の続流はカットする。
2. 異常電圧対策
(1) 過電圧の種類
@ サージ性過電圧
開閉サージ(内部異常電圧)、雷サージ(外部異常電圧)
A 短時間交流過電圧
一線地絡時に健全相に発生する過電圧、負荷遮断時にフェランチ効果・自己励磁による電圧上昇
(2) 開閉サージ対策
@ 容量性電流の遮断(電力コンデンサ回路の遮断)
残留電荷による回復電圧が、再点弧サージを生じる(再点弧→LC振動→過電圧)。
対策として、遮断器には、消弧能力の大きい空気遮断器・ガス遮断器を使う。
A 無負荷送電線への電源投入
送電線の残留電荷があるときに電源投入すると、再点弧サージを生じる。
抵抗投入方式:対策として、抵抗を介して投入し、その後、抵抗を短絡する。
同期投入方式:対策として、開閉時の位相を制御して、電源側の交流電圧が0となるときに遮断器を操作する。
B 誘導性電流の遮断(無負荷変圧器の励磁電流・分路リアクトルの電流の遮断)
電流裁断現象により過電圧が発生する。
対策として、抵抗付き遮断器を採用する。または、サージアブソーバが挿入された系統に避雷器を設置する。
(3) 雷サージ対策(雷害対策)
外部異常電圧として、直撃雷・誘導雷・侵入雷がある。
耐雷設計上、特に問題となるのは、波高値・波頭峻度が大きい近接雷である。
⇔遠方雷は電線路を進行中に、がいしを通して放電される。
接地抵抗値は十分低くする必要があり、その方式には単独接地、連接接地、網状接地がある。
@ 外部異常電圧対策として、送電線引込口に避雷器を設置する。接地抵抗値は小さくする。
A 直撃雷対策として、避雷器・避雷針のみでは機器の保護が不十分のため、架空地線を十分に施し、遮蔽する。
B 所内機器の絶縁強度として、所内機器の絶縁レベルを基準衝撃絶縁強度(BIL)の値に設定し、限度を超えた過電圧に対しては変電所内避雷器によって保護する。
変電所内避雷器の保護範囲外では、絶縁レベルを基準衝撃絶縁強度(BIL)の120%の値に設定する。
C 低電圧制御回路へのサージ侵入対策として、回路電線に金属シース付きケーブルを用いる。
D ガス絶縁変電所の採用。気中絶縁変電所よりサージインピーダンスが低く、ガス絶縁開閉設備と変圧器を一体で保護でき、効果的な絶縁協調が図れる。
※逆フラッシオーバ
変電所近接の鉄塔に雷が直撃し、鉄塔の接地抵抗が高い場合に、鉄塔の電位が上昇し、鉄塔から変電所へサージが侵入する。
3. 高調波障害対策
サイリスタなどの半導体スイッチング素子の普及により、系統の高調波含有率が増加している。
第3高調波は各相同相なので、通信線に誘導障害を生じる。
高次の高調波ほどコンデンサを流れやすいので、コンデンサが過熱する。
対策
@ 整流器のパルス数を増加して、きめの細かい制御をする。
A 整流器の位相をシフトさせることにより、各相の制御する時間を変える。
B 交流フィルタを挿入して高調波を除去する。
C 大容量系統から受電する。
4. 変圧器の騒音低減対策
(1) 発生原因
@ 鉄心の磁気ひずみ振動:磁化の半サイクルごとに鉄心が伸縮し、励磁周波数の2倍の周波数が騒音となる。
A 巻線の振動:巻線間の電磁力により、巻線が振動する。
B 冷却機ファンの騒音:送油風冷式の変圧器において
C タンクの振動:鉄心や巻線の振動が、タンクで共振する。
(2) 対策
@ 鉄心の磁束密度を低くする。磁気ひずみの少ない鉄板を使う。鉄心の締付を強くする。
A 冷却ファンの回転数を下げる。水素冷却など騒音を発しない冷却方式を採用する。
B タンクの共振周波数を励磁周波からずらす。二重タンク構造。タンクに吸音材を入れる。
C 変圧器を屋内に収容し、防音壁を設置する。
D 変圧器本体に防振ゴムを設置する。
5. 火災対策
地下変電所やビル内変電設備では特に重要となる。
@ 自動消火装置
A 延焼の防止
機器の離隔距離を十分取り、不燃性耐火隔壁を設ける。類焼防止のため注水装置を設置する。また、防災扉を設置する。
B 床の防火対策
床に排油設備を設置する。床のピットに砂を敷き詰め、ケーブルを火災から守る。
C 油入り機器の補強
タンクを補強し、機器内部故障時の内圧上昇による、タンク破壊・火災を防ぐ。
D 難燃性・不燃性機器の採用
遮断器・開閉器:油入機器を採用せず、ガス式・真空式を採用する。
電力ケーブル:油入(OF)ケーブルを採用せず、架橋ポリエチレン(CV)ケーブルを採用する。
制御ケーブル:難燃性ケーブルを採用する。
変圧器:油入変圧器を採用せず、難燃性変圧器を採用する。
H種乾式変圧器
空冷なので、油入変圧器よりも冷却効果が劣る。絶縁に空気を用いるので、機器が大きくなってしまう。小容量限定。
モールド変圧器
巻線の絶縁にエポキシ樹脂を用いているので、耐湿性が高い。空冷なので、油入変圧器よりも冷却効果が劣る。小容量限定。
ガス絶縁変圧器
絶縁媒体にSF6ガス、冷却媒体にフロロカーボンを用いる。冷却効果に優れる。大容量機器用。
シリコン油変圧器
難燃性のシリコン油を用いる。
6. 変電所への要求事項
大都市の過密需要地域に設置される変電所には、次のことが要求される。
@ 高信頼性:故障・事故の防止。発生した場合も最小限で留め、負荷の切換を速やかに行う。
A 遮断容量:過密地域では短絡電流が大きい。遮断器の遮断容量を不足が無いようにする。
B 縮小型:過密地域では用地確保が難しい。SF6ガス絶縁の縮小型変電所を採用する。
C 防災安全対策:火災・感電事故への対策。消火設備の完備。
D 騒音防止対策:低騒音変圧器の採用。
E 誘導障害対策:静電誘導・電磁誘導障害への対策。
F 環境調和:日照問題など、建築基準法の各規制に適合する。
そのほか、
G 保守点検の省力化
H 事故復旧の自動化