変電用変圧器

  

1. 変圧器の構造

(1)  三相変圧器:単相変圧器3台分を一体化した鉄心構造の変圧器。

ž 鉄心材料が少なく、軽く、鉄損が小さい。

ž 据え付け床面積が小さい。

ž ブッシングや油の量が少なく、価格が安い。

ž 母線との接続が簡単になる。

 

(2)  負荷時タップ切換変圧器

負荷電流が流れている状態のままで、タップを切り替えることができる。

タップをつなぎかえることで、巻数比を変えて、出力電圧を調整する。

タップ選択器:タップを選択する。

切換開閉器:選択された回路の電流を開閉する。

限流リアクトル:タップ間橋絡時の循環電流を制限する。(または限流抵抗)

正規状態では、リアクタンス0

橋絡時には、循環電流に対してリアクタンス作用をする。

 

(3)  難燃性変圧器

防火対策として用いる。

ž H種乾式変圧器

空冷なので、油入変圧器よりも冷却効果が劣る。絶縁に空気を用いるので、機器が大きくなってしまう。小容量限定。

ž モールド変圧器

巻線の絶縁にエポキシ樹脂を用いているので、耐湿性が高い。空冷なので、油入変圧器よりも冷却効果が劣る。小容量限定。

ž ガス絶縁変圧器

絶縁媒体にSF6ガス、冷却媒体にフロロカーボンを用いる。冷却効果に優れる。大容量機器用。

ž シリコン油変圧器

鉱油の代わりに、難燃性のシリコン油を絶縁に用いる。

 

(4)  ブッシング

変圧器の口出線を金属ケースから引き出す箇所で、線とケースの絶縁に用いる。

@ 単一形ブッシング(22kV以下):磁器製のがい管の中に導体を通した構造

A コンデンサブッシング(22kV):中心導体上に、油浸絶縁紙と金属箔を積層させた構造

 

(5)  巻線の絶縁

@ 均等絶縁

巻線全体の絶縁強度を、線路端子の絶縁強度と一致させる。Δ結線変圧器でされる。

 

A 段絶縁

Y結線変圧器の接地した中性点端子の絶縁強度を、線路端子の絶縁強度より低くした巻線絶縁方式。

 

a.有効接地の場合

一線地絡時に、健全相の電圧が、常時の1.3倍以下になるように、中性点インピーダンスを抑える接地方式。直接接地方式など。段絶縁が可能。

 

b.非有効接地の場合

一線地絡時に、健全相の電圧が、常時の1.3倍を超えるような中性点インピーダンスで中性点を接地する方式。

中性点と大地の間に避雷器を設置すれば、段絶縁可能。中性点端子の絶縁強度を、線路端子の絶縁強度の (58%)に落とすことができる。

 

(6)  移行電圧対策

移行電圧:変圧器の高電圧側に進行波が侵入した場合、低電圧側に高電圧を誘起することがある。

ž 電磁移行電圧:電磁誘導による。コイルの巻数に比例する。

ž 静電移行電圧:静電誘導による。コイル間・コイル−大地間の静電容量で決まる。

対策として、

@ 変圧器に遮蔽板を取り付ける。

A サージアブソーバ(コンデンサと避雷器の並列接続)を低圧側−大地間に挿入する。

 

 

2. 変圧器の冷却方式

@ 乾式自冷式

外気の自然対流と放射によって放熱する。油入式よりも冷却効果が劣る。絶縁に空気を用いるので、機器が大きくなってしまう。小容量限定。

 

A 乾式風冷式

送風機で外気を強制的に循環させることによって放熱する。H種乾式変圧器など。

 

B 油入自冷式

油の自然対流によって放熱する。自冷式なので、運転・保守が容易。油量、寸法、重量が大きくなるので、小容量用途。

 

C 油入風冷式

油入自冷式の放熱器に送風機を取り付け、強制風冷を行う。

 

D 送油自冷式

変圧器と放熱器の間を、油を送油ポンプで循環させることによって放熱する。放熱器は屋外に、変圧器は屋内に設置するので、騒音防止上有利。運転・保守も比較的容易。

 

E 送油風冷式

送油自冷式の放熱器に送風機を取り付け、強制風冷を行う。冷却効果が高く、小型にできるので、大容量機の主流。

 

F 送油水冷式

送油ポンプで循環させた油を水で冷却する。風冷式よりも騒音が小さいが、保守に手間がかかる。地下変電所に用いられる。

 

G ガス冷却式

フロロカーボン、SF6などを用い、液体の気化熱を利用し、冷却する。

 

 

3. 変圧器の絶縁油

絶縁油の役割は、絶縁と冷却である。

(1)  絶縁油の条件

@ 絶縁耐力が大きいこと

A 化学的に安定で、引火点が高く、凝固点が低いこと

B 冷却作用が大きいこと

 

(2)  変圧器の呼吸作用 → 絶縁油の劣化

周囲温度・負荷の変化により、油の容積が変化するので、タンク内の圧力と大気圧に差を生じ、開口から空気が出入りする。それによって、湿気が吸入されたり、不溶解性のスラッジを生じ、絶縁強度・冷却作用が低下する。

 

(3)  劣化防止

a.絶縁油を空気と接触させない

@ 開放式:コンサベータを本体タンクの上に設け、油の膨張や収縮をこの中で行う。

A 密封式・浮動タンク式:窒素ガスを封入する。

B 隔膜式:ゴム膜や金属ベローズを用い、外気と油を完全に隔離する。

 

b. 絶縁油に添加剤を加えて、安定度を高める

c. シリカゲルや活性アルミナなどの吸収材を入れた吸湿呼吸器を用い、湿気や酸を除く。

 

(4)  絶縁油のガス分析

変圧器内部で局部過熱やコロナ放電が発生すると、温度上昇により絶縁油・絶縁紙が熱分解し、発生したメタン・アセチレンなどの可燃性ガスは、油中に溶解する。

このガス成分をガスクロマトグラフで分析し、異常の有無・劣化箇所を判断する。

 

 

4. 変圧器の結線

 単相変圧器3台の結線方法

@ Δ-Δ

三相のうち一相が故障しても、残り二相V-V結線で運転を継続できる。

3高調波電流を環流させられるので、起電力は正弦波となり、通信障害が少ない。

Δ結線は、そのままでは中性点接地ができないので、配電用の低電圧回路で用いられる。

Δ結線の中性点を接地する場合には、別途、接地変圧器が必要となる。

 

A Δ-

一次側Δ結線を低電圧回路に、二次側Y結線を高電圧回路に接続し、送電線の送電端など昇圧用として使う。

角変位があるので、並行運転には注意を要する。一次と二次の線間電圧の位相差-30°。

Δ結線で第3高調波電流を環流させることができるので、通信障害が少ない。

Y結線の中性点を接地できる。

 

B -Δ

一次側Y結線を高電圧回路に、二次側Δ結線を低電圧回路に接続し、送電線の受電端など降圧用として使う。

角変位があるので、並行運転には注意を要する。一次と二次の線間電圧の位相差30°。

Y結線の中性点を接地できる。

Δ結線で第3高調波電流を環流させることができるので、通信障害が少ない。

 

C -

Δ-Δ結線の一相を取り除いた結線。変圧器の利用率が低く、電圧が不平衡となる。

変圧器1個の定格出力の倍までしか負荷が掛けられないので、出力はΔ-Δの 

故障時の応急用や、将来の需要増への対応策として使われる。

 

D -

接地されていない場合には、励磁電流中に含まれるべき第3高調波電流が流れないので、誘起電圧が正弦波にならず、ひずみ波形となる。

接地した場合には、接地線を通じて第3高調波電流が流れて、誘導障害を生じる。

 

E --Δ

三次をΔ結線に接続し(安定巻線)、励磁電流中の第3高調波電流を環流させる。誘導障害や、一線地絡事故時の地絡電流を打ち消す効果もある。

角変位が無いので、並行運転・系統連係上有利となる。

三次巻線には、調相設備を接続して力率改善を行うほか、低電圧の所内負荷に使われる。

 

※ 角変位:一次側線間電圧と二次側線間電圧の位相差

 

 

5. 変圧器の並行運転

運転条件

@ 極性があっていること(異なると、非常に大きな循環電流が流れ、巻線を焼損する)。

A 一次・二次定格電圧が等しいこと=巻数比が等しいこと(巻数比が等しくないと、循環電流-横流が流れ、無用の銅損を生じる)。

B 百分率インピーダンスが等しいこと(異なると、負荷電流の分担が不適当になる)。

C 巻線抵抗と漏れリアクタンスの比が等しいこと(異なると、電流に位相差でき銅損が増す)。

 

さらに三相変圧器では、

D 電圧の角変位が等しいこと(異なると、大きな循環電流が流れる)。

E 相回転方向が一致していること。

 

 

6. 変圧器の保護継電方式

保護継電器:故障区間を電力系統から切り離すように遮断器に制御信号を送る。

@  差動継電器

常時は、一次変流器・二次変流器で形成された差動回路を電流が環流して、継電器には電流は流れない。内部故障ならば、一次・二次間の差電流が継電器に流れ、動作する。

整定値に従って、一定の差電流があれば、いつでも動作するので誤作動を起こしやすい。

 

A  比率差動継電器

差動電流/抑制電流がある比率を超えたときに、内部事故と判定する。

差動継電器の欠点を改善している。

 

B  過電流継電器

比率差動継電器の後備保護として用いられる。過負荷保護として用いられる。

 

C  ブッフホルツ継電器

内部事故が生じた場合に、急激な油流変化や分解ガスの圧力によって機械的に動作する。

変圧器タンクとコンサベータを結ぶ管の中に設置される。

 

D  衝撃油圧継電器

密閉型変圧器において、内部事故が生じた場合に、分解ガスによるタンクの内圧上昇を検出し、機械的に動作する。

 

E  温度継電器

内部事故が生じた場合に、変圧器油温の温度上昇を検出し、動作する。

サーチコイル式温度計は変圧器巻線中に埋設される。

 

 

7. 変圧器の騒音低減対策

(1)  発生原因

@ 鉄心の磁気ひずみ振動:磁化の半サイクルごとに鉄心が伸縮し、励磁周波数の2倍の周波数が騒音となる。

A 巻線の振動:巻線間の電磁力により、巻線が振動する。

B 冷却機ファンの騒音:送油風冷式の変圧器において

C タンクの振動:鉄心や巻線の振動が、タンクで共振する。

 

(2)  対策

@ 鉄心の磁束密度を低くする。磁気ひずみの少ない鉄板を使う。鉄心の締付を強くする。

A 冷却ファンの回転数を下げる。水素冷却など騒音を発しない冷却方式を採用する。

B タンク共振周波数を励磁周波からずらす。二重タンク構造。タンクに吸音材を入れる。

C 変圧器を屋内に収容し、防音壁を設置する。

D 変圧器本体に防振ゴムを設置する。

 

 

8. 計器用変成器

@ 計器用変圧器(降圧変圧器)

ž 二次側は一端を接地し、短絡してはならない。

ž 変圧比の精度を高める。そのため、インピーダンス電圧効果を少なくし、励磁電流を抑制する(鉄心に、低損失で透磁率の高い方向性ケイ素鋼板を採用する)。

ž 計器用変圧器には、電磁型変圧器のほかに、コンデンサ型変圧器がある。

 

A 変流器

ž 二次側は開放してはならない。

ž 定格から事故電流までの広い領域での変成精度が必要。そのため、磁束密度を低くし(損失の少ない鉄心材料を使い、断面積を大きくする)、巻線の抵抗・漏れリアクタンスを小さくする。

ž 運転中に二次側回路を切り離す場合は、変流器の二次端子を短絡しなくてはならない(二次誘導電圧による巻線破壊を防ぐため)。

 

なお、二次側負荷の計器や避雷器などを負担と呼んで、線路の負荷と区別する。

 

 

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