保護継電装置(保護リレー装置)
1. 保護継電器の具備条件
(1) 感度
系統構成、運転状況、事故様相によらず、保護対象区間の異常現象を確実に検出する感度を有すること。
常時の負荷電流・送電線充電電流が大きい系統、保護継電器設置点から遠い地点の事故では、検出感度が低くなる場合がある。
(2) 選択性
事故点を識別し、設備停止範囲を最小とするための選択性を有すること。
保護対象区間の事故だけを検出し、その他の区間の事故では応動しないこと。
必要以上の区間を停止すると、停電範囲の拡大、健全設備の過負荷に伴う事故の波及拡大につながる。
(3) 速度
系統安定度の維持、事故設備の損傷拡大・波及の局限化に必要な高速動作が可能であること。
事故継続時間が長引くと、発電機の動揺が大きくなって、系統の安定度が低下し、事故設備の損傷拡大・他設備への波及につながる。
(4) 信頼性
誤動作・誤不動作の発生を極力抑えること。
動作不良の早期発見・処置:自動監視機能
誤動作防止:独立した複数の保護継電器の同時動作で遮断指令を出すこと
誤不動作防止:保護継電器の二重化・後備保護継電器
(5) 運用保守性
運転状態に応じた適切な整定、長期にわたる信頼性・機能維持、経済性。
2. 保護継電器の形態
@ 主保護継電器
高速に事故点を選択し、必要最小限の停止で事故除去を行う。第一番目に動作するよう整定された保護継電器。
A 後備保護継電器
事故除去ができなかった場合(主保護継電器が誤不動作した場合・遮断器が遮断に失敗した場合)のバックアップとして、事故を確実に除去する。広い停止範囲で、動作時間を遅く整定された保護継電器。
3. 保護継電器の動作形式
@ 電磁形・誘導円盤形:従来の保護継電器
耐震性・耐久性が低い。
高調波ノイズに強い。
A アナログ静止形:半導体を用いた継電器
耐震性・耐久性が高い。
高調波ノイズの影響を受けやすいので、アナログフィルタによる対策が必要。
B デジタル静止形:マイクロプロセッサを活用した、高機能保護継電器
信号の瞬時値をサンプリングし、デジタル値に変換したデータをソフトウェアで演算処理する。
耐震性・耐久性が高い。
高調波ノイズに強く、誤動作が起こりにくいので、信頼性が高い。
端子数に制限を受けない。
ソフトウェアの変更だけで、継電器の特性・整定値が容易に変更できる。
ソフトウェアの入れ替えだけで、自動点検機能・常時監視機能などの、各性能の保護継電装置を容易に実現できる。ハードウェアの増加が無い。
自動点検機能・常時監視機能などの付加により、通信回線を介し、無人変電所の遠隔運用保守が可能となる。省力化に貢献。
従来の継電器より、駆動電力が小さい。
送電側保護継電器に不良が発生した場合、受電側保護継電器の時限整定の短縮が、早期に対応可能となる。
設備事故時の継電器(リレー)動作内容に関する情報を、遠隔地から早期収拾可能となる。
4. 保護継電器の種類
@ 過電流保護継電器(OCR)
一定値以上の電流が流れたときに動作する継電器。
整定値を基準に、大電流は早く、小電流はゆっくり動作する時限特性を持たせている。
限時要素:過電流の検出
瞬時要素:短絡電流の検出
A 過電圧保護継電器(OVR)
予定値を超える電圧が回路に加わった場合に動作する継電器。
B 不足電圧保護継電器(UVR)
電路の電圧が予定値以下に低下した場合に動作する継電器。
停電や負荷の短絡等に伴う電圧低下の警報用、予備発電機の起動指令に使用される。
C 差動継電器(DFR)
保護区間に出入りする差動電流が予定値を超えた場合に動作する継電器。
常時は、一次変流器・二次変流器で形成された差動回路を電流が環流して、継電器には電流は流れない。内部故障ならば、一次・二次間の差電流が継電器に流れ、動作する。
整定値に従って、一定の差電流があれば、いつでも動作するので誤作動を起こしやすい。
D 比率差動継電器(RDFR)
差動回路部分の、動作コイルの電流と抑制コイルの電流の比が予定値を超えた場合に動作する継電器。差動継電器の欠点を改善している。
E 短絡方向継電器(DSR)
線間電圧と相電流との組み合せで短絡位置の方向を判定する継電器。
短絡位置が保護区間ならば動作する。
F 地絡方向継電器(DGR)
零相電圧と零相電流とで地絡方向を判定し動作する継電器。
G 距離継電器(DR)
電圧と電流の比(インピーダンス)が所定値以下となったとき動作する継電器。
故障点までの距離を判定し、保護区間ならば動作する。
これらは電気式の継電器で、ほかにブッフホルツ継電器など機械式の継電器もある。