次世代ディスプレイ

 

1.ブラウン管

2.液晶ディスプレイ

3.プラズマディスプレイ

4.有機ELディスプレイ

5.FED・SED

6.比較

 

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1. ブラウン管(CRT : Cathode Ray Tube)

(1) 原理

@ 電子銃から電子ビームが照射される。ビームの強弱が、発光輝度の明暗に対応する。

A 偏向ヨークで発生させた磁界により、ビームの軌道を制御する。

B ビームをRGBの発色をする蛍光体に当てて発光させ、カラー表現する。

 

ž  電子銃はRGBの計3本。

 

(2) 長所

ž  応答速度が速く、各画素がインパルス駆動されるので、動画表示に強い。

 

(3) 短所

ž  解像度に限界がある。解像度を上げると、輝度が落ちる。画素開口率(光の透過率)が下がるため。

ž  輝度を上げるために、ビーム強度高くすると、消費電力が大きくなってしまう。

ž  ビーム強度を高くすると、関係の無い周辺画素にも影響を及ぼしてしまう。

ž  長時間同じ画像を映し続けると、焼きつきが発生する。

ž  原理上、内部を真空に保つ必要があり、薄型化できない。

 

※ 輝度:ある方向の光度Iθ を、垂直に投影した面積で微分した値。単位面積当たりのディスプレイの明暗を表す。

 

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2. 液晶ディスプレイ(LCD :  Liquid Crystal Display)

(1) 原理

@ バックライトから光が照射される。発光は画素自身ではなく、バックライトが行う。

A 液晶画素に光を透過させる。光の透過率を制御し、発光輝度の明暗に対応する

B 光をカラーフィルタでRGBの色をつけて、カラー表現する。

 

 

(2) 長所

ž  バックライトの蛍光管は、省電力性能に優れ、CRTよりも消費電力が小さい。

ž  画素開口率がCRTPDPよりも高く、解像度が高い。

ž  長寿命。寿命はバックライトに依存するが、冷陰極蛍光管で6万時間。

ž  軽量化・薄型化が可能。

 

(3) 短所

ž  自発光では無いので、コントラストに難がある。

ž  自発光では無いので、視野角に限界がある。

ž  応答時間が20ms以上あるのでCRTより遅く、動画を見ると残像が映る。

 

※ コントラスト:最大輝度と最小輝度の比で表わされる。大きいほど黒がきれいに表現される。

 

 

(4) 液晶による明暗の制御

@ 液晶を90°位相をずらした2枚の偏光板で挟み込む。

A 液晶入口の偏光板によって、バックライトからの入射光の位相を統一する。

B 液晶出口の偏光板を光が透過できるかできないかで、明暗の表示を制御する。

a. 光の位相を変化させずに、そのまま液晶を通過させた場合には、出口の偏光板を透過できない(暗表示)。

b. 光の位相を90°変化させて、液晶を通過させた場合には、出口の偏光板を透過できる(明表示)。

 

 

(5) 液晶の種類

@ TN液晶(縦電界駆動方式)

液晶分子の「旋光現象」を、電圧で制御することによって、液晶画素の明暗を操作する。

a. 電圧オン状態の時、液晶分子が縦方向に直立し、光の位相に影響を及ぼさない(暗表示)。

b. 電圧オフ状態の時、液晶分子はそのねじれた配列によって、光の位相を回転させる(明表示)。

 

ž  迷光が存在し、視野角が狭く、角度によってはコントラスト性が悪い。

 

TN液晶での旋光現象:液晶を透過する光は、液晶分子によって、位相がねじれる。ねじれ具合は電圧で変化する。

 

※ 液晶分子:液晶画素に封入されている高分子化合物

 

 

A IPS液晶(横電界駆動方式)

液晶分子が光を「複屈折」させる現象を、電圧で制御することによって、液晶画素の明暗を操作する。

a. 電圧オフ状態の時、横たわった液晶分子の方向は、光の位相に影響を及ぼさない(暗表示)。

b. 電圧オン状態の時、液晶分子が向きを変えて、光を拡散させて、光の位相を回転させる(明表示)。

 

ž  TN液晶よりも迷光が少ないので、見る角度で色が変わることは無く、視野角も広くなる。

ž  迷光すなわち漏れる光が少ないので、TN液晶よりもコントラスト性が高い。

ž  電圧オフ状態の時、暗表示である(ノーマリーブラック)。

 

IPS液晶での光の複屈折:液晶を透過する光は、液晶分子の向きの変化(回転方向)によって拡散される。液晶分子の向きは電圧で変化する。

 

 

B MVA液晶(マルチドメインVA液晶)

液晶分子が光を「複屈折」させる現象を、電圧で制御することによって、液晶画素の明暗を操作する。

a. 電圧オフ状態の時、液晶分子が縦方向に直立し、光の位相に影響を及ぼさない(暗表示)。

b. 電圧オン状態の時、横たわった液晶分子が、光を拡散させて、光の位相を回転させる(明表示)。

 

ž  TN液晶よりも、迷光が少ないことは、IPS液晶と同様である。そのため視野角も広く、コントラスト性も高い。

ž  さらに改良したものとして、PVA液晶やCPA液晶がある。

ž  電圧オフ状態の時、暗表示である(ノーマリーブラック)。

 

MVA液晶での光の複屈折:液晶を透過する光は、液晶分子の向き(縦横)によって拡散される。液晶分子の寝る角度は電圧で変化する。

 

 

C OCB液晶

液晶分子が光を複屈折させる現象を、電圧で制御することによって、液晶画素の明暗を操作する。

a. 電圧オン状態の時、垂直に立った液晶分子は、光の位相に影響を及ぼさない(暗表示)。

b. 電圧オフ状態の時、液晶分子は弓なりに配向し、光を拡散させて、光の位相を回転させる(明表示)。

 

ž   液晶自体の特性として、広い視野角と、高いコントラスト性を実現できる。マルチドメイン化などの工夫は必要ない。

ž   他の液晶よりも高速応答が可能で、動画視認性が良い。

ž   電圧オン状態の時、暗表示である(ノーマリーホワイト)。黒がきれいに表現できる。

 

応答時間

 

TN液晶

IPS液晶

MVA液晶

OCB液晶

常温

35ms

20ms

20ms

5ms

-20

350ms

1700ms

1300ms

130ms

 

 

(6) 液晶の駆動方式

@ パッシブマトリクス駆動

ドット数と同じ本数の電極を格子状に敷く。各画素の直下に交差点が来る。

クロストークが発生しやすい。

 

※ クロストーク:目的の周囲の画素も、電圧駆動してしまい、残像が見えてしまう。

 

 

A アクティブマトリクス駆動

各画素ごとに、スイッチング素子を格子状に配置する。

トランジスタのオン・オフで、各画素の電圧を独立制御する。

ž  クロストークが起きにくい。

ž  液晶の応答時間が速い。

 

この駆動方式を採用した液晶ディスプレイを、特にTFT液晶と呼ぶ。

トランジスタ(TFT)は、ガラス基板上に低温プラズマCVDで生成したアモルファスシリコンによって形成される。

 

 

B オーバードライブ駆動回路(DCC駆動回路)

印加電圧の方形波パルスに対して、液晶の発光輝度の明暗は積分回路のように遅れて変化する。

そのため、極端な電圧変化には輝度も速く応答できるが、微妙な変化の場合は応答が遅いので、残像が残る。

そこで、あえて目的の電圧値よりも低く(アンダーシュート)、または高く(オーバーシュート)することによって、輝度の応答を強制的に速くさせる。

 

 

C 倍速駆動技術

秒間のコマ数を、自動的に合成して増やす(補間フレーム)。

それによって、見かけ上、映像が連続的になり、残像が軽減される。

 

 

(7) バックライト

@ 冷陰極蛍光管(CCFL : Cold Cathord Fluorescent Lamp)

電極に数百Vの高電圧を印加し、電子を放出する。放電によって発生した紫外線が蛍光体にぶつかって発光する。

ž  消費電力が小さい。

ž  管径を細くできるので、薄型ディスプレイに有利。そのため、現在液晶用バックライトの主流。

ž  寿命は6万時間と長い。

 

 

A 熱陰極蛍光管(HCFL : Hot Cathord Fluorescent Lamp)

電極のフィラメントを加熱し、熱電子を発生させる(低電圧)。放電によって発生した紫外線が蛍光体にぶつかって発光する。

ž  消費電力が大きいが、そのぶん輝度が高く明るい。発光効率も高い。

ž  電極が大きいので、管径が太くなる。

ž  寿命は300015000時間。

 

 

B 発光ダイオード(LED : Light Emitting Diode)

半導体のPN接合に電圧を印加すると、キャリアの再結合によって発光する。

ž  発光する光の色純度が高い。

ž  単色のLEDRGBの蛍光体を組み合わせたものや、RGBそれぞれのLEDを混色する構成がある。後者のRGB-LED方式が主流。白色LEDはノートパソコンに使われる。

ž  RGB-LED方式は、色再現性に優れる。

ž  寿命は10万時間で、とても長い。

ž  駆動システムの消費電力が大きい。

ž  LED自体の価格が高い。

ž  バックライトとして使われるほかに、LEDディスプレイもある。応答性が速い。

 

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3. プラズマディスプレイパネル(PDP : Plasma Display Panel)

(1) 原理

@ 画素内部の希ガスに放電し、紫外線を発生させる。

A 紫外線を、蛍光体に当てて、発光させる。

B RGB単色を発光する画素(サブピクセル)を並べて、カラー表現する。

 

 

ž  発光は画素自身が行う。

ž  自発光なので、黒は発光しないことで表現される。

ž  階調表現が、RGB各サブピクセルの明滅頻度(時間積分)で行われる。放電電圧の強度とは関係がない。たとえば輝度を明るくするには、単位時間内に何回も光る。

 

※ 階調表現:RGBそれぞれの輝度を調節することによって、色を再現する。

 

 

(2) 長所

ž  自発光なので、コントラスト感が高く、視野角も広い。黒がきれいに表現できる。

ž  応答時間は液晶よりやや速い(7ms)。動画視認性が良い。

ž  CRTや液晶より色再現性が良い。カラーフィルタ等の工夫により、大きく改善された。

 

(3) 短所

ž  明るいところでは、コントラスト比が大きく低下する。ディスプレイ表面の構造に起因する。

ž  応答速度自体は速いが、輝度・階調が時間積分によるデジタル的表現なので、動画を見たとき疑似輪郭が知覚されやすい。

ž  同じ映像を表示し続けると、焼き付きが起きやすい。

ž  発光効率が悪いので、液晶・CRTより消費電力が大きい。

ž  希ガスプラズマ放電の発光色が影響する可能性がある。技術的な工夫が必要。

ž  構造上(画素隔壁)、画素開口率が液晶より小さい。小型のパネルで解像度を高くすることができない。

ž  寿命は2万時間で、液晶よりも短い。(ただし、輝度が半分に低下する時間をPDPの寿命と定義する場合。純粋な意味での寿命は、液晶と同じく6万時間とされる。)

 

 

(4) プラズマ

陰極から出た2次電子によって、電離と励起が起こる。

@ キセノンの直接電離

 

A 準安定状態への励起(ペニング効果)

 

B 準安定原子による電離(ペニング効果)

 

C 電子衝突励起

 

D 光子の自然放出

 

キセノンプラズマから出る147nmの紫外線が、蛍光体を励起して、RGB可視光に変換する。

 

 

(5) 高純度クリスタル層

FEDのように、負性電子親和力を持った電子放出源を備える。

すなわち、従来の、電極から電子放出→プラズマ放電→紫外線→蛍光体の発光に併せて、

クリスタル層からも電子を放出させることによって、放電効率の向上に貢献している。

 

それによって、

ž  高効率発光:22%効率を向上させ、消費電力の低減に貢献できる。

ž  高速放電:放電速度が3倍に上がり、より高度な階調表現能力が確保される。

 

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4. 有機ELディスプレイ

(1) 原理

@ 電圧をかけ、有機化合物の画素発光層を電気的に駆動させて、発光させる。

A 色表現はカラーフィルタを用いるか、有機化合物自体からRGBを発光させるかして表現する。

 

 

ž  発光は画素自身が行う。黒は発光しないことで表現される。

ž  輝度は印加電圧で制御される。

ž  透明電極である陽極側から視聴者に向けて光が出力される。

ž  発光ダイオードのように、構造自体は単純。

ž  曲がる有機ELディスプレイなども開発されている。

 

(2) 長所

ž  自発光なので、PDPと同じくらいコントラスト感が高く、鮮やか。

ž  視野角はCRTと同じくらいに広い。

ž  応答速度が液晶より3ケタも速く(数十μs)、各画素がインパルス駆動されるので、動画表示に強い。

ž  原理上、熱を出さない。

ž  バックライト不要で、構造も単純なので、超薄型。

 

(3) 短所

ž  発光効率が悪いので、液晶より暗い。

ž  輝度を補うために、消費電力が大幅に増加する。

ž  寿命は5000時間と短い。湿気や酸化により、有機化合物の劣化が速い。

 

 

(4) 発光方式

@ RGBそれぞれの色を発光する有機化合物を、平面方向に並べる。

ž  解像度を細かくするのに限界がある。

ž  各色の有機化合物の劣化具合が違うので、使っているうちに画面の色がおかしくなる。

 

A RGBそれぞれの色を発光する有機化合物を垂直方向に並べて、積層構造にする。

ž  1ピクセルでRGB画素を実現できるので、解像度が高い。

ž  製造が困難。

 

B 白色発光の有機化合物に、RGB3色のカラーフィルタを組み合わせる。

ž  単一材料なので、劣化がばらつかない。

ž  発光した3分の1しか使えないので、発光効率が低い。

 

C 青色発光の有機化合物に、色変換用の赤と緑を作る蛍光体を組み合わせる。

ž  白色発光よりは、発光効率が良い。

ž  画質の劣化は、色変換の蛍光体に依存する。

 

 

(5) 駆動

液晶のアクティブマトリクス駆動のように、TFTが使われる。2個のトランジスタで電流を制御する。

ただし、応答速度の速い有機ELに対応させるため、アモルファスよりも電子移動度の大きいポリシリコンが使われる。

 

 

(6) 無機ELとの比較

ž  有機EL10V駆動なので、無機EL200Vより駆動電圧が低い。

ž  有機ELは無機ELよりもカラー化しやすい。

ž  耐久性からくる寿命については、有機化合物を使っていない無機ELのほうが優れる。

 

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5. 電界放出型ディスプレイ(FED : Field Emission Display)

(1) 原理

@ 電子銃から電子が放出される。

A 階調表現は電子の放出量でアナログ的に制御される。

B 電子をRGBの発色をする蛍光体に当てて発光させ、カラー表現する。

 

 

ž  原理としては、CRTに似ている。ただし、FEDの電子銃は各サブピクセルに4000個以上。

ž  電子銃には負性電子親和力を持った、カーボンナノチューブや、プラズマCVD生成のダイヤモンドなどが使われる。

ž  発光は画素自身が行う。黒は発光しないことで表現される。

ž  SEDも、FEDの一種。SEDでは、電子銃の代わりに、数十kVを印加した基板のナノギャップから、トンネル効果によって電子が飛び出す(各ギャップには数十Vが印加される)。

 

(2) 長所

ž  発光効率が高い。

ž  自発光なので、コントラスト感が高く、視野角も広い

ž  応答速度がブラウン管並みに速く(μsオーダー)、各画素がインパルス駆動されるので、動画表示に強い。

ž  画素開口率が大きい。高解像度。

 

(3) 短所

ž  電子ビームの通り道は真空に保つ必要がある。

ž  要求される技術レベルが高く、製造コストも高いので、事業化が困難。

 

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6. ディスプレイ比較

(1) 液晶とPDP

PDPは動画視認性が良いとされるが、液晶においても、オーバードライブ・倍速化技術によって、応答時間が速くなっているので、実使用上遜色のないレベルまで追いついてきている。

また、コントラスト比についても、液晶の技術が向上している上、もともとPDPは明るい所ではコントラスト比が大きく低下するので、必ずしもPDPが優れているとは言い切れない。

 

(2) 液晶

OCB液晶が最も優れた性質の液晶ではあるが、IPS液晶やMVA液晶でもオーバードライブ・倍速化などによって、実使用上、差は無くなってきている。

 

(3) 有機ELFED

どちらも、動画視認性に関する欠点を持たない、非常に優れた次世代ディスプレイである。

応答時間については原理上、FEDが最速となる。

ただ、FEDの一種・SEDに関しては、特許の訴訟問題があって、開発・販売計画が完全に遅れてしまった。

有機ELは構造的な柔軟性があるので、小型・薄型用途や液晶全般の代替として期待されることになる。

それに対し、FEDは特性上やや大型向きなので、PDPの代替という位置付けになるだろうか。

 

 

代表的な値による比較

 

液晶

プラズマ

有機EL

FED

発光源

バックライト

自発光

(蛍光体)

自発光

(有機化合物)

自発光

(蛍光体)

コントラスト比

3000:1

3:1

100:1

2:1

応答時間

20ms

7ms

数十μs

数μs

消費電力

(40インチ)

200W

300W

500W

100W

寿命

60000h

20000h

5000h

20000h

 

 

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