燃料電池車

 

 

1. 燃料電池車の利点

2. 燃料電池

3. 水素貯蔵

4. 水素製造

5. パワートレーン

6. エネルギー効率

 

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1. 燃料電池車の利点

@   省エネルギー=燃費の向上

内燃機関よりもエネルギー効率が高い。理論効率では83%(at 25 1atm)

 

A   脱炭素化

水素を燃料とするため、化石燃料からの脱却が可能(もちろん水素をどのようにつくるかも大きくかかわるが)。結果としてCO2削減。

 

B   大気汚染対策=ゼロエミッション(ZEV)

有害な排出物が無く、水しか生成しないので、環境負荷の低減。

 

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2. 燃料電池

車載用途として固体高分子型(PEFC)が選択された。ほかの燃料電池に比べて優れた点は次の通り。

   小型軽量の観点から、最大出力密度が高い。

   常温から動作が可能である(20100)。すなわち、起動時間が短い。

   負荷追従性。スイッチのオンオフにすぐに応えられる。

   電解質が固体であるため成型性に優れる。

 

 それでも、燃料電池特有の欠点があり、

   始動性において、燃料電池が70℃に達するまで十分な特性が得られない(数秒かかる)。

   低温作動性。氷点下で生成水が凍結する。

   外気との温度差が小さく、燃料電池の排熱を逃がすために、大きなラジエータ(ガソリンエンジン車の2倍の総面積)が必要。

⇔ガソリン車は排ガスと同時に排熱ができる。

   バッテリーと比べると、燃料電池はレスポンス=負荷追従性が悪い。

⇔電気自動車のバッテリーは最初から大電流供給が可能。

 

 

今後の開発課題

   低温作動性の改善。寒冷地では、燃料電池内の水が凍ってしまう。

⇒ポンプなど水を排出する工夫や電気ヒータによる予熱などの対策。

 

   水分管理。低温作動性にもかかわるが、空気極で生成される水分と高分子電解質中の水分の管理(水素イオンの透過性を増すため電解質中には水分が必要)。

⇒加湿の必要性の少ないイオン交換膜の開発。

 

   高温運転(ラジエータを小さくするため)。⇒高分子膜の耐熱温度を現状の80℃から120150℃へ。

 

   電極触媒(白金)のコスト、耐CO性。⇒合金触媒の開発。

 

   より薄く(1mm未満)低コストのセパレータ開発(セパレータに求められる性能は、ガスの遮断性と電子伝導性の両立)。

⇒カーボングラファイトからプレス加工の金属材料へ転換。

 

   耐久性。乗用車は5000時間。バスは1000020000時間。⇒触媒、高分子の耐久性向上。

 

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3. 水素貯蔵

満足な航続距離(500km以上)を得るためには、数kgの水素が必要。その水素貯蔵としては、高圧ガスタンクが選ばれつつある。

 

@   高圧ガスタンク

○ 気体水素は技術的に楽。

× エネルギー密度が低く、航続距離が短い。(35MPaでは、水素100リットル、2kg200km)

 

A   液化ガス

○ 気体の水素よりも密度が高くタンクの容積がコンパクトになる。

× 液化(-253)に大量のエネルギーが必要。低温の液体のため扱いが難しく、貯蔵中にボイルオフ(気化)が起こる。

 

B   水素吸蔵合金

○ 容積としては液体水素よりもさらにコンパクト。

× 重量がかなり大きい。2kgの水素のためには100kgの合金が必要。

 

C   車上改質

○ メタノールやCHFなど、常温の液体なので扱いやすく貯蔵も容易。既存のガソリンスタンドを使いやすい。

× 改質器を搭載するためのスペースが必要。CO2を排出する(メタノールでもガソリン車の3分の1)。

 

CHF 硫黄を除いたガソリン。メタノールよりも大がかりな改質器が必要で排出CO2も多い。

 

 

今後の開発課題(高圧ガスタンク)

   タンクの目標水準として、水素5kg500km超の航続するために、タンク容量80リットル未満、重量90kg未満。

 

   35MPaから70MPaへ高圧化(ただし分子間距離に限界があり、水素の量は2倍にはならず、1.31.5倍)。耐久性のため、タンクの肉厚を1.5倍高くする必要もある。

 

   水素吸着剤を併用し、内蔵量を増やす方法もある(ホンダでは、35MPaのまま、内蔵量を増やしている)。

 

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4. 水素製造

現状の水素ステーションでは化石燃料を使った改質が有利で主流。しかし、電気的に製造するにしても、もとが火力発電では、ゼロエミッションにはならない。オンサイト方式(現場で水素を製造)とオフサイト方式(プラントで集中的に製造し、搬送)がある。

 

@   改質(炭化水素ガスに水蒸気を添加することで水素と一酸化炭素を生成する)

○ 製造効率が高い(8590%)。インフラ的にも低コスト。

× 化石燃料を使う。

 

A   水の電気分解(固体高分子電解法等も含まれる)

○ 太陽光・風力等の自然エネルギーを利用できる。純度の高い水素が得られる。

× 高コスト。自然エネルギーだと間欠的で安定性に欠ける。

 

B   バイオマス(植物、豚の糞尿)

○ 再生可能なエネルギー。

× 実証レベルであり、実用化レベルに到達していない。

 

C   副生水素(製鉄所のコークス炉)

○ 現状すでに製造の基本技術を保有している。

× パイプライン、液体水素トレーラなどで水素そのものを運搬する必要がある。

 

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5. パワートレーン

ガソリンハイブリッド車の技術(モータ、バッテリー、インバータ等)を燃料電池車にも応用する。特にトヨタでは燃料電池車をハイブリッド車の延長上として考えている。⇒FCHV:燃料電池ハイブリッド車

   燃費を向上させる。減速時にモータを発電機として回生制動し、電力をバッテリー・キャパシタに充電する。加減速の多い条件ではさらに燃費が向上。

   燃料電池システムは高負荷で効率が低下するので、バッテリー・キャパシタでパワーアシストし、負荷を平滑する。

   燃料電池の負荷追従性の悪さを、瞬間大電流を供給できるバッテリー・キャパシタで補う。

 

@   モータ

ガソリンエンジンと比べた場合の特長として、

   低負荷で効率が良い。⇔エンジンは高負荷で効率が良い。

   出力の変化に対応しやすい。

   低速時のトルクが大きいので、発進加速が良い。

 

さらに、インホイールモータを採用することによって、

○ スペースを有効利用可能(変速機、デファレンシャルギア、ドライブシャフト不要)。

× 乗り心地、路面追従性が悪化するという問題点もある。

 

しかし、モータ駆動の場合、高回転・高負荷運転の時に、大電流を発生し、電流経路の内部抵抗により効率が悪化、更には発熱するという問題もはらんでいる。

(ちなみに、ガソリンハイブリッド車の場合はエンジンとモータ駆動が並列しているので、そこまでの大電流は発生しない。モータだけで駆動する、電気自動車EV、純粋な燃料電池車FCVFCHVに共通する問題点である。)

 

 

A   バッテリー

 (1)ニッケル水素電池

   水溶液系の電解液を使用しているので、大電流・電圧変動・熱に弱く、充電末期には水の電気分解が起こり、発熱→劣化し、セルのバラつきが発生し突然死する可能性がある。

 

 (2)リチウムイオン電池

   有機溶媒系の電解質を使用しているので、分解しない。そのため、バラつきは発生しない。

   分子的な化学変化をしないので、電池の体積膨張による応力変化が起こらず、電極を薄くすることが可能である。

 

技術動向

   車載用途としては、ニッケル水素電池が先行していたが、将来的にはリチウムイオン電池が採用される。

 

   バッテリーモジュールとしては、放熱性に優れたラミネートセルを直列接続し、セルコントローラーを含めて開発されている。

 

   日産では、ハイブリッド車の開発では遅れたが、200kWの電池シミュレータ(北斗電工と共同開発)を使ってリチウムイオン電池の開発を集中的に行い、それを用いた電気自動車の海外生産も発表された。

 

 

B   電気二重層キャパシタ

特徴として、瞬間大電流に特化している。

○ 出力密度が高い(10kW/kg)。充放電時間がとても短い。化学変化を伴わないので劣化しにくい。

× エネルギー密度が低い(リチウムイオン電池の10分の1)。過電圧に弱い。充放電に伴い、電圧が大きく変動する。

 

車載リチウムイオン電池とキャパシタの比較

 

 

リチウムイオン電池

ラミネート型(日産)

ウルトラキャパシタ

(ホンダ)

エネルギー密度

[Wh/kg]

140

2

出力密度

[W/kg]

2500

1750

 

技術動向

   エネルギー密度については、電極材料の開発や電子回路との組み合わせにより、鉛蓄電池以上の水準には達している。

 

  電圧変動の大きさについては、燃料電池も同じであるため相性がよく、バッテリーと異なりDC-DCコンバータを使わない大電流供給システムが可能である。

 

   ホンダは燃料電池車等に、比較的ウルトラキャパシタを使っていこうとする姿勢がみられる。

 

   リチウムイオンキャパシタ

負極にリチウムイオンをプレドープすることにより電位を下げ、電極間の電圧を高める。結果として、キャパシタ以上のエネルギー密度を実現できる。

スバルでは96セル288Vのパッケージを開発している。

 

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6. エネルギー効率

   燃料効率(Well to Tank):燃料の採掘→車両への補給

   車両効率(Tank to Wheel):車両への補給→走行

   総合効率(Well to Wheel):燃料効率×車両効率

 

FCHVは車両効率こそ高いものの、現時点では総合効率でHVに負けている。

 

 

燃料効率[%]

Well to Tank

車両効率[%]

Tank to Wheel

総合効率[%]

Well to Wheel

ガソリン

88

16

14

HV(2代目プリウス)

88

37

32

FCV(高圧水素)

58

38

22

FCHV

58

50

29

FCHV目標

70

60

42

出典: トヨタホームページより

 

 

燃料電池車の効率の一例

 

車両効率40/83=48%

 

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