1. 課題認識
2. バイオ燃料
3. 電気自動車
4. ハイブリッド車
5. プラグインハイブリッド車
6. 燃料電池自動車
1. 課題認識
環境を破壊することなくかつ資源を枯渇なく継続して利用することを目指す。
現状の課題:省エネ・地球温暖化対策(CO2削減)・大気汚染防止(NOX等削減)
技術的対応:代替燃料(バイオ燃料)・電気技術の適用(EV・HEV等)
2. バイオ燃料(バイオエタノール・バイオディーゼル)
@バイオエタノール
サトウキビ・トウモロコシなどを発酵させて作るアルコール。ガソリンに混ぜて自動車燃料として使用する。
Aバイオディーゼル
菜種油・オリーブ油・魚油・牛脂・天ぷら油などの生物由来の油脂から化学処理により作られる、ディーゼルエンジン用の燃料そのもの。脂肪酸メチルエステル(FAME)と水素化分解軽油(BHD)がある。
メリット
・ 再生可能な自然エネルギーであるため、燃焼させても地表の循環炭素量を増やさない(カーボンニュートラル)。
・ 既存の化石燃料の供給インフラや利用技術を大きく変更せずに利用できる。
デメリット
・ バイオマスの増産即ち耕地面積・収穫の拡大の影響として、肥料投入による水質汚濁、森林破壊、遺伝子操作などによる環境システムの崩壊につながる懸念がある。
・ 食べ物との競合。穀物の不足、価格の高騰を起こす。
・ 化石燃料と比較した場合の化学的特性(腐食性・蒸気圧等)・信頼性(熱劣化)への懸念。
将来の展望
・ 高濃度バイオエタノールを使用するためには、専用車を造らなければならなくなる。
そのため、技術的課題・食糧との競合が解決されるまでの当面の間は、低濃度で使用していく。
将来的には、大量導入・高濃度使用を図っていく。
・ バイオディーゼルは、各国の規格を統一化する必要がある。
そのため、まず当面の間は既存の技術でまかなえる低濃度FEMAを使用する。
将来的には、燃料物性の優れたBHDの商業化を確立した上で、普及を拡大させる。
・ 食べ物との競合を避け、大量導入するために、廃材・雑草・藁・海藻などのセルロース系バイオマスの技術開発にも期待される。
3. 電気自動車(EV)
バッテリーに充電した電気を使い、モータで走行する。内燃機関を全く搭載していないので、その利用形態にはバッテリーの性能が大きく関わる。
モータが低速走行で効率が高く、バッテリー容量に起因する航続距離が短いことから、軽自動車に適する。
メリット
・ 走行中に排気ガスを一切排出しないので、環境負荷が極めて小さい。
・ 構造が単純であり、騒音・振動が小さい。
・ 減速時にエネルギーを回生でき、再利用が可能。
・ インホイールモータ導入によりシャフトを省略した場合、そのスペースの有効利用が可能。
デメリット
・ バッテリーの重量・スペースが極めて大きい。そのため、搭載量の制限により1回の充電による航続距離が制限される。
(普通乗用車で、使用者の満足を得るためには500kmは走る必要がある。)
・ バッテリーの保護のため、急速な充電を避ける必要があり、充電時間が長い。
・ 大容量バッテリーの コストの高さ(16kWhで320万円)。
・ 交流同期モーター・インバーターシステムの コストの高さ。
・ 電気スタンドの設置等のインフラ整備が必要(ただし、電力線さえあれば設置できるので、政策的には容易である)。
EVのバッテリー
電気自動車用のバッテリーはエネルギー密度が重視される。⇔ハイブリッド車用のバッテリーは出力密度が重視される。
したがって、電気二重層キャパシタは、電気自動車のメインの蓄電素子としては適さない。
将来の展望
・ リチウムイオン電池技術の向上により、従来のニッケル水素電池と比べ、高エネルギー・高出力密度を達成し、航続距離の延伸に貢献が期待される。
・ 車載用リチウムイオン電池の技術を用いることにより、風力・太陽光発電など定置用電力源の負荷平準化用途としての活用が進めば、電池のマーケットが拡大し、コスト低減が期待される。
・ 将来的な普及のために、時間貸駐車場に電気スタンドを設け、買い物をしている間に充電するという試みも行われている。
・ エンジンとモータが並列するハイブリッド車に比べて、モータ駆動のみの電気自動車・燃料電池車は大電力を制御しなくてはならない。
すなわち大電流を扱わなければならないので、電流経路の電流許容量・損失・発熱について、どのように設計するかが課題になる。
例えば、ハイブリッド車のプリウスの場合、電流経路の設計値130A、バッテリー最大放電電流値65Aに対し、実際の駆動では20〜30Aとされている。
三菱自動車 i MiEV(アイミーブ)
2009年発売が期待されている小型電気自動車。
軽自動車(ガソリン車)が1km走行当たり125gのCO2を排出するのに対し、i MiEVは発電時の排出を含め、72%削減できるとしている。
3種類の充電方法に対応している。急速充電においては、30分で充電できる。
CO2排出量(10・15) |
35g/km |
|
永久磁石式同期モータ |
47kW |
|
リチウムイオンバッテリー (3.7V×4セル×22直列) |
330V |
|
16kWh |
||
一充電走行距離 |
160km |
|
フル充電 |
100V/15A |
14時間 |
200V/15A |
7時間 |
|
急速充電(80%) 3相200V |
30分 |
4. ハイブリッド車(HEV)
作動原理が異なる2つ以上の動力源を持ち、状況に応じて単独、あるいは複数と、動力源を変えて走行する自動車。
一般的には、内燃機関にバッテリーとモータを組み合わせた「化石燃料+電気式のハイブリッド車」をいう。
メリット
・ 従来のガソリンスタンでの給油のみで、距離の制限なしに走行を続けられるので、新たなインフラ整備を行う必要がない。
・ 前述の電気自動車よりもバッテリーのエネルギー量は小さくて済む。
デメリット
・ まだ一般車よりは割高である。
・ 電気自動車・燃料電池車に比べれば、排気ガスの分だけ環境負荷が多少ある。
HEV方式の種類
@ シリーズ方式
内燃エンジンは発電機の駆動のみに用い、発生した電力をバッテリーに一旦蓄えて、その電力でモータを駆動し、走行する。
出力制御は容易だが、内燃と電気のシステムが共存するので、占有スペースと重量が大きく、熱となって失われるエネルギーが多いため、効率は高くない。
A パラレル方式
搭載している複数の動力源を車輪駆動に使用し、内燃エンジンは車輪の駆動と発電機(モータ)の駆動の両方を行う。
低速時にはモータによる走行、アクセルを踏み込むと内燃エンジンに切り替わり、高速時にはさらにモータ駆動が加わる。
バッテリーは自動的に充電され、内燃エンジンは理想的な回転と負荷で駆動されるので高効率で燃費がよく、CO2やNOxの排出量も抑えられる。
シリーズ方式に比べ、重量・効率の面で優れる。
構造や制御の複雑さは、インバータによるVVVF制御など、パワーエレクトロニクス技術により解決されている。
B スプリット方式
パラレル方式にさらにバッテリー充電専用の発電機(ジェネレータ)を加えたシステム。
内燃エンジンの動力を動力分割機構により分割し、一方は発電機の駆動に、他方は車輪の駆動に利用することができ、発電量と駆動力の分配割合を自在に制御できる。
低速時・軽負荷時には内燃エンジンは停止し、モータのみで走行できるので、パラレル方式よりモータの利用率が高く、エネルギー利用効率が高くなる。
モータを働かせている間にも発電できることがパラレル方式とのちがいである。
ガソリン車モード
内燃エンジンは高速回転時の出力は大きいが、中低速回転ではトルクが小さくなるので、トランスミッションによる減速が必要となり、排ガスによる大気汚染・CO2排出という環境負荷が大きい。
電気自動車モード
モータは低速回転時でも大きなトルクを得られ、エネルギー効率も高いので環境負荷が少ないが、バッテリーの性能面から長距離走行はできない。
HEVのバッテリー
前述の通り、ハイブリッド車用のバッテリーは出力密度が重視される。
実際使用されているニッケル水素バッテリーの性能は、エネルギー密度が36Wh/kg、出力密度が1300W/kgというレベルである。
また、バッテリーの代わりに、アラミド紙を用いて絶縁性能を改善した電気二重層キャパシタを動力源に用いる方法もある。
ただし、現状キャパシタのコストは高い。
新型プリウス VS 新型インサイト
あくまでエンジンでの走りにこだわるホンダと、エンジンとモータを並列させる考えのトヨタでは、ハイブリッドシステムの構成に違いがある。
トヨタ プリウス |
ホンダ インサイト |
|
ハイブリッド方式 |
スプリット |
パラレル |
燃費(10・15) |
35.5km/l |
30km/l |
CO2排出量(10・15) |
65g/km |
77.4g/km |
エンジン |
56kW |
65kW |
永久磁石式同期型モータ |
50kW |
10kW |
ニッケル水素バッテリー |
201.6V (20kW) |
100.8V |
6.5Ah (1.3kWh) |
5.75Ah (580Wh) |
将来の展望
・ ハイブリッド車は燃料電池車にも必要な技術であり、燃費の向上・CO2排出の削減が見込めることから、当面普及拡大していくと予想される。
・ 新型プリウス・新型インサイトともに、結局リチウムイオンバッテリーを採用せず、従来のニッケル水素バッテリーを使用している。
車載バッテリーとしてリチウムイオンには、コスト面か信頼性に問題が残っているものと予想される。
基本的に過充電・過放電に対する耐久性以外は、特性全般的にわたってリチウムイオンの方が優れているため、ハイブリッド車においても、将来的には移行することは間違いないと考えられる。
5. プラグインハイブリッド車(PHEV)
家庭用電源でバッテリーを充電し、電動走行ができる「電気自動車とハイブリッド車」のハイブリッド。
一般的なハイブリッド車よりもバッテリー容量を増やすことで、特に市街地など低速時のモータによる電気自動車モードで走行できる距離を長くできる。
(現状100V、2〜3時間の充電で、電気自動車モードで13km走行)
長距離走行や高速時には内燃エンジンとモータによるハイブリッド車モードで駆動する。
電気自動車よりも広い範囲の充電状態を扱うので、バッテリーを過充電・過放電しないためのエネルギー管理システムが必要となる。
メリット
・ 駆動エネルギーとして電気の比率が増えるため、CO2削減にも大気汚染防止にも貢献できる。
・ 家庭などで充電することにより、電気自動車モードの延長が可能であり、燃費が向上。
・ 安い深夜電力の利用で、運行コストの低減が見込まれる。
・ 使用者自身が走行のために使用する動力源を選択可能。
デメリット
・ ハイブリッド車よりも大型で重量のあるバッテリーを搭載しなければならない。そのため、電気自動車モードでの走行が十分でないと、燃費の向上が見込めない。
・ コストは電気自動車同様、バッテリーの価格に大きく左右される。
将来の展望
・ ハイブリッド車を電気で動かすプラグインハイブリッド車はCO2削減に相当期待をされている(現状一般車両の50%削減を見込まれている)。
・ バッテリーに関して小型車でも6kWhが必要とされ、これはプリウス(1.3kWh)の4倍以上とされる。バンタイプの大型車では14kWhが必要とされる。
一刻も早く、車載用リチウムイオン電池の市場への大量投入が待たれる。
6. 燃料電池自動車(FCV)・燃料電池ハイブリッド車(FCHEV)
燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーを使って、モータを回して走る。
メリット
・ 走行時にCO2や有害物質を全く排出しないので、環境負荷が極めて小さい。
・ 理論的には水素の持つエネルギーの83%を電気エネルギーに変えることができ、ガソリン内燃機関自動車の最高効率30〜40%を大きく上回る。
・ 天然ガスやエタノールなどの、石油以外の多様な燃料を利用可能。
・ 太陽光やバイオマスなどクリーンで再生可能なエネルギーを利用して水素を製造することによって、環境負荷を低減できる。
・ 電気自動車同様、振動・騒音が小さい。
・ バッテリーの充電よりも、短時間で燃料充填が可能。
デメリット
・ 販売価格一億円以上。そのほとんどが燃料電池システム関連のコストとされる。
・ 低温起動時に生成水が凍結してしまい、スタックの発電がうまくいかない。
・ 水素のエネルギー密度が小さく、航続距離を延長するには水素タンクが大きくなる。
・ 水素スタンドという新たなインフラ整備が必要となる。
・ 燃料効率(Well to Tank)が低いので、現状、総合効率でハイブリッド車を下回る。
将来の展望
・ 車両効率(Tank to Wheel)60%以上を達成し、総合効率でハイブリッド車を上回ることを目指している。
・ 白金の使用量の削減、それに代わる安価な触媒の開発が待たれる。
・ 燃料電池単独では付加変動に追従できず回生エネルギーも利用できないので、ハイブリッド車の内燃エンジンを燃料電池に置き換えた燃料電池ハイブリッド車の形が現実的である。