1. クリーン発電の必要性
2. クリーン発電の促進
3. クリーン発電のコスト
5. 太陽光発電
7. 燃料電池
8. バイオマス発電
9. 廃棄物発電
10. 地熱発電
11. 小水力・マイクロ水力発電
12. 分散エネルギーネットワーク
1. クリーン発電の必要性
・ 化石燃料資源への依存度の低減
「省資源」「ナショナルセキュリティ」というエネルギー供給の観点で、化石燃料から再生可能なエネルギー資源への移行が要求されている。
ナショナルセキュリティとは、インフレ・燃料コスト変動の影響を受けない純国産エネルギーの供給安定性を確立することである。
日本の一次エネルギーの石油依存度は他の主要国に比べて高く、多くを中近東に頼っている。
また、IEA(国際エネルギー機関)により石油火力発電所の新設は禁止されている。
資料:資源エネルギー庁「電源開発の概要」等より (2006年データ)
・ 地球温暖化対策
京都議定書では、削減目標を「1990年基準で温室効果ガス6%削減(2008〜2012年の平均)」と定められている。
温室効果ガスのうち、地球温暖化寄与率に関して言えば、二酸化炭素が64%、メタンが19%、フロン・代替フロンが10%で、二酸化炭素の影響度が最も大きい。
火力発電所は、建設・運用に加え、燃料から多量のCO2を排出する。
一般にクリーンとされる太陽光・風力発電所も、建設・運用において、CO2を排出する。
出典:電力中央研究所報告書
・ 原子力発電所の安全性、放射性廃棄物の問題
原子力発電所は、CO2排出量の点で、非常に優れた発電所であり、太陽光・風力発電所よりもCO2排出量が小さい。
また、ウランさえ輸入すれば数年は使用できるので、準国産エネルギーとして取り扱われる。
しかし、放射線の危険をとるか、CO2の排出をとるかという選択になってしまう。
当面の間、原子力発電所に頼らざるを得ないのが実情だが、可能な限り依存度を下げたい。
・ マイクログリッド(分散型電源)の要求
大規模集中型の発電所から送電するのではなく、電力需要の直近で送電ロス・送電コストを低く抑えた、分散型の自給電力網を形成することにより、エネルギーを有効利用する。
2. クリーン発電の促進
・ 新エネルギー法(1997年6月制定)
資源制約が少なく、環境特性に優れた性質を示す、石油代替エネルギーの導入に係る長期的な目標達成に向けた進展を図ること目的に制定された。
発電分野では、風力・太陽光・天然ガスコジェネレーション・燃料電池・バイオマス発電・廃棄物発電が該当するが、2010年導入目標達成には未だ至っていない。
資料:総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告書
供給サイドの再生可能エネルギー |
供給サイドの新エネルギー |
需要サイドの新エネルギー |
水力発電 地熱発電 波力発電 海洋温度差熱発電 |
風力発電 太陽光発電 太陽熱利用 バイオマス発電 バイオマス熱利用 廃棄物発電 廃棄物熱利用 |
燃料電池 天然ガスコジェネレーション 電気自動車 ハイブリッド車 燃料電池車 |
・ RPS法
地球温暖化対策として、経済産業大臣が新エネルギー(風力・太陽光・地熱・小水力・バイオマス)の利用目標を定め、その基準利用量を電気事業者ごとに設定、利用を義務付けるもの。罰則もあるので、電気事業者は、新エネルギー等から発電される電気を、買い取ることも含めて利用しなければならない。
3. クリーン発電のコスト
新エネルギーのコストは、建設コスト・発電コストともに、総じて高い。普及には補助金が必要であるとともに、太陽電池・燃料電池などの開発においても、コスト削減を見据えた技術開発が必要である。
現状のコストのままでは、風力発電・太陽電池・燃料電池の大量導入は見込めない。
風力発電では、空気の流体としての運動エネルギーを、機械的回転力に変換し、発電機を駆動する。
同時同量を実現できない(小水力やガスタービンと異なる)ため、大量導入するためには、系統連係・貯蔵・出力安定化が必要となる。
写真:愛知県田原市の臨海ウィンドファーム
(1) 風力発電の利点
環境負荷が少ない。
発電時に大気汚染物質を発生しない。
エネルギー源がクリーンで無尽蔵に存在する。
メンテナンスが比較的容易である。
(2) 風力発電の問題点
風のエネルギー密度が低い。
大規模な発電のためには、膨大な設備と空間が必要となる。100万kWを得るのに248km2。
出力の変動が大きい。
風況に大きく依存するため、時間・年間にわたって出力変動が大きい。大規模発電施設の導入が進むと、系統電圧・周波数など電力品質に与える影響が懸念される。
設備利用率が低い(日本で30%以下)。
風況に左右されるので、稼働時間が少ない。
発電量当たりの設備費が高く、発電コストが高い。
風切り音による騒音、景観問題、バードストライク、落雷など、風車特有の問題がある。
(3) 風力発電の現状
風車の大型化(1500〜3000kW)が進んでいる。
単機あたりの発電量が増えている。しかし大型化により風車特有の問題も大きくなる。
風力発電所が風況の良い場所に集中的に建設されている。
ウィンドファームについて、北海道苫前町の40MW、稚内市の57MWのほか、北海道・東北日本海側を中心に建設が進んでいる。長野などの内陸部には、風況が良くても、資材の運搬の困難さから大規模設備の建設が難しい。
小型風車(50kW以下)・マイクロ風車(1kW以下)の導入
電力の確保に不自由な場所での独立電源、街路灯用、照明用などの用途で導入されている。太陽電池・小水力・内燃機関とのハイブリッドシステム(インバータ・バッテリ)の導入例もある。
(4) 風力発電の将来
ウィンドファームの拡大
大型風力発電所の導入量拡大・出力安定のため、系統連係に関して、会社間の連携線の活用、蓄電池の活用が考えられている。
オフショア発電
洋上に建設することにより、安定した風に恵まれ、騒音・景観の問題による土地の制約も小さくなる。しかし反面、建設に資材やエネルギーの消費を増やし、ますます発電コストが高くなる恐れもある。
5. 太陽光発電
太陽光発電では、光起電力を利用し、太陽光のエネルギーを直接電気エネルギーに変換して発電を行う。
風力と同様の問題を持っているため、導入には系統連係・貯蔵・出力安定化が必要となる。出力が直流なので、パワーコンディショナー(DC-DCコンバータ・インバータ)を介して、交流変換・自立/系統連係切換が行われる。
なお、太陽電池の生産量は日本がトップである。
写真:国際宇宙ステーション 独立型太陽光発電
(1) 太陽光発電の利点
環境負荷が少ない。
発電時に大気汚染物質や騒音を発生しない。
エネルギー源がクリーンで無尽蔵に存在する。
地表面での太陽光エネルギーは、1時間当たり1kWh/m2となる。
規模に関係なく発電効率が一定。
メンテナンスが容易である。
発電機の機械的摩耗が一切ない。
(2) 太陽光発電の問題点
エネルギー密度・変換効率(20%)が低い。
大規模な発電のためには、膨大な設備と空間が必要となる。100万kWを得るのに67km2。
出力変動が大きい。
日射量に依存するため、昼夜・天気によって変動が大きい。
設備利用率が低い(日本で20%以下)。
天候に左右される上、夜は発電できないので、稼働時間が少ない。
発電量当たりの設備費が高く、発電コストがとても高い。
(3) 太陽光発電の現状
小規模分散型太陽電池を中心に普及している。
家庭用4kW級のシステムが、電力会社による余剰電力の優遇買い取り制度や、政府の設置補助金もあって、屋根や空き地などに普及した。しかし現在、補助金は打ち切られ、導入量は停滞している。
工場の屋上にメガワット級の発電システムが設置された例もある。
シャープ亀山工場には、5150kWの世界最大規模の発電システムが設置されている。
(4) 太陽光発電の将来
導入量の停滞に対して、コストの改善・性能の改善が強く望まれる。
新型太陽電池開発などによる、コスト(製造・建設の全過程における消費エネルギー・資源)の改善、変換効率・耐久性の改善が期待される。
建材一体型太陽電池モジュールの大量導入
高価なため費用回収に年月がかかるが、多様な設置形態が可能で意匠性も重視されているので、環境への貢献を視覚的に訴えることができ、適用の増加が期待されている。
メガソーラー発電14万kWの導入計画
大面積の設備を建設すれば、太陽電池全体を雲が覆うことはないので、ならし効果により、安定した電力が得られる。稚内市、川崎市臨海部、武豊火力発電所内、堺市臨海部などに計画されている。
世界的に見れば、太陽光に恵まれる砂漠地帯での導入が期待される。
ゴビ砂漠で研究が進められている。太陽電池をゴビ砂漠全体に敷き詰めれば、世界全体のエネルギー消費をまかなえるとも考えられている。
6. 天然ガスコジェネレーション(ガスタービン・マイクロガスタービン)
天然ガスコジェネレーションでは、天然ガスを燃料として発電を行うと同時に、発生する排熱も利用する。
ガスタービン自体の熱効率は低いものの、コンバインドサイクルや、コジェネレーションシステムによって、総合効率を高くすることができる。
ただし、コジェネレーションは電気の需要と熱の需要の両方が直近で存在することが、有効利用するための条件となる。したがって、分散型電源では実現可能だが、大規模集中型発電設備では不可能である。
発電された電気はインバータを介して自立/系統連係切換され、タービンの排熱は回収され熱水・蒸気として供給される。
(1) ガスタービンの利点
環境負荷があまり大きくない。
燃料として、天然ガスを使用することにより、CO2・NOxの削減に貢献できる。排ガス自体もクリーンな特性を示し、一酸化炭素や未燃炭化水素が少ない。
排熱の利用価値が高く、コジェネレーションシステムに利用可能。
コジェネレーションによって、総合効率80%を実現できる。
小型軽量で高出力なため、分散型電源に適する。
設置、起動停止も短時間で行える。
(2) ガスタービンの問題点
排ガス量が多い。
騒音が比較的大きい。
天然ガスなどの良質の燃料が必要。
(3) ガスタービンの現状
コジェネレーション用ガスタービン(1〜50MW) の普及
六本木ヒルズには、6360kWのガスタービン6台が使われている、蒸気タービン、熱供給施設と組み合わされたコジェネレーションシステムが形成されている。
コジェネレーション用マイクロガスタービン(50〜500kW)の普及
100kW程度のマイクロガスタービンが、病院・福祉施設・温浴施設のコジェネレーションシステムに使われている。
(4) ガスタービンの将来
低コスト化への期待
分散型電源用マイクロガスタービンを量産することにより、製造コストの低下が期待されている。
高効率の300kW級セラミックガスタービンの開発
金属ガスタービンはタービン入口温度が900℃程度で熱効率が15〜20%だが、高耐熱のセラミックガスタービンにより、1350℃・42.1%を実現できる。
燃料電池+ガスタービンのコジェネレーションシステムの実現
動作温度が600℃以上の燃料電池と組み合わせることにより、燃料電池の排ガスをタービンで回収し、ガスタービン排熱を燃料の改質へ使うことができる。ガスタービンの動力回収により、燃料電池の発電効率を5〜10%上昇させることができる。
7. 燃料電池
燃料電池では、化石燃料から水素を生成し(改質)、化学反応によって直接発電を行う。
出力が直流なので、パワーコンディショナー(DC-DCコンバータ・インバータ)を介して、交流変換・自立/系統連係切換が行われる。排熱は回収されコジェネレーションシステムが形成される。コジェネレーションには電気と熱の需要の不整合な場合への対処が必要となる。
(1) 燃料電池の利点
環境負荷が少ない。
発電時に大気汚染物質や騒音を発生しない。
発電効率が高い。
分散型電源として使用する場合、都市ガスが利用できる。
排熱の利用価値が高く、コジェネレーションシステムに利用可能。
コジェネレーションによって、総合効率80%を実現できる。
(2) 燃料電池の問題点
化石燃料から水素を製造する際に、二酸化炭素を発生する。
水の電気分解による水素生成では省エネルギーにならないので、都市ガスを改質して生成される。
水素貯蔵技術が不完全。
耐久性の不安。
高温で作動するため、燃料電池の部材の劣化が激しい。
燃料電池本体がとても高価。
(3) 燃料電池の現状
リン酸型(PAFC)200kW級が、準商用機として最も普及している。
ホテルやビルなどの冷暖房へのコジェネレーションシステム用分散型電源として世界で200台くらい出回っている。
しかし、産業用としての溶融炭酸塩型と固体酸化物型に効率で劣り、家庭用としての固体高分子型に性能・コストで劣るので、位置付けが中途半端となり、現在では導入は失速している。
溶融炭酸塩型(MCFC)は、産業用電源として普及している。
シャープ亀山工場には250kW機が4台、セイコーエプソン伊那事業所には250kW機が2台、中部電力新名古屋発電所には300kW機がそれぞれ稼働している。
高温動作のため、排熱利用もできる。
バイオガスの有効利用。
サッポロビール千葉工場では、排水からバイオガスを取り出し改質して水素を生成し、リン酸型燃料電池200kW機を稼働させている。
排メタノールの有効利用。
セイコーエプソン豊科事業所では、半導体工場の排メタノールを改質して水素を生成し、リン酸型燃料電池200kW機2台を稼働させている。
(4) 燃料電池の将来
1kW級家庭用電源として、固体高分子型(PEFC)の開発
都市ガスや給湯器と結びついた、コジェネレーションシステムとして開発されている。まだ、耐久性や価格に課題を残している。
10kW級業務用電源として、固体酸化物型(SOFC)の開発
発電効率が高く、作動温度が1000℃と高いことから、排熱を有効利用したコジェネレーションシステムとして開発されている。
8. バイオマス発電
バイオマス発電では、バイオマスあるいはそこから生成されたガスを燃料とし、タービンあるいは燃料電池などの分散型電源で発電し、排熱をコジェネレーションシステムで有効利用する。
バイオマスには電力用のほか、バイオエタノールやバイオディーゼルとして、自動車燃料にも使われる。
バイオマスの種類
@ 廃棄物系バイオマス(家畜糞尿・生ゴミ・間伐材・黒液・わら・下水汚泥)
A エネルギー作物系バイオマス(サトウキビ・トウモロコシ・海藻・木材)
ガス燃料・液体燃料化
@ バイオマス(木材系)に水蒸気を加えて熱分解ガス化(メタンガス・水素)
A バイオマス(糞尿・汚泥・生ゴミ)をメタン発酵によりバイオガス化(メタンガス主成分)
B 発生したメタンガスからメタノール生成
発電
@ バイオマス(木材・わら・黒液)をそのまま燃焼し、蒸気タービンにより発電
A メタンガス・バイオガスでガスタービン発電・コンバインドサイクル発電する。排熱は回収し、コジェネレーションシステムを形成。
B 水素・メタンガス・メタノールを燃料電池で発電する。排熱は回収し、コジェネレーションシステムを形成。
(1) バイオマス発電の利点
エネルギー源の賦存量が多い。
廃棄物の60%がバイオマスとして有効に利用される。
本来使われずに捨てられていたエネルギーをリサイクルする。
カーボンニュートラル
バイオマスを燃焼させて二酸化炭素を発生させても、それはもともと植物が光合成で大気中の二酸化炭素を炭素として固定していたものなので、常にバイオマス用植物を再生産し続ければ大気中の二酸化炭素は増えないことになる。
廃棄物燃焼時のダイオキシン低減
生ゴミをバイオガス化することにより、ダイオキシンなど有害物質を出す可能性が低くなる。
燃料の貯留・移動が可能。
排熱の利用価値が高く、コジェネレーションシステムに利用可能。
(2) バイオマス発電の問題
エネルギー密度の低さ。
広く薄く分布するので運搬・収集しなければならない。
エネルギーの供給が不安定。
例えば、わらは秋だけ、サトウキビのバガスも冬だけ。
バイオガスの成分は不安定なので、カロリーが不安定で、燃焼効率も不安定。
(3) バイオマス発電の現状
スギなどの林業産地でメガワットクラスの発電プラントの例
建築廃材・間伐材などの木くずを燃焼させ、蒸気タービンで発電している。秋田県能代市のプラントでは3MW、福島県白河市・山口県岩国市・大分県日田市のプラントでは10MW級の発電を行っている。
都市型スーパーに建設された、生ゴミを処理するバイオガス化プラントの例
川崎市のビブレ新百合ヶ丘店では、バイオガスプラントで熱だけを利用している。
生ゴミのバイオガス化燃料電池発電プラントの例
神戸市の施設では生ごみ(一日約6t)をメタン発酵させ、バイオガスを発生させる。バイオガスの中から水素を取り出して燃料電池で発電させる。
(4) バイオマス発電の将来
バイオマスの新しい燃料化技術
ともに木材に含まれる、セルロースのエタノール化、リグニンの液体燃料化の研究が報告されている。実現すれば、世界のエネルギー源としてとても大きい。
海洋植物の利用
日本は国土が狭いので木材系は利用しにくいが、成長の早い海洋植物を燃料として利用できれば、発電量が期待できる。
9. 廃棄物発電
廃棄物発電では、元来、ゴミ処理の一環として行われていた焼却の過程で出てくる熱エネルギーを、蒸気タービン(復水方式)で電気に変える。
理想としては、生ゴミは可能な限りバイオマス発電にまわし、バイオマスとして利用できない可燃性廃棄物を燃料とする。
(1) 廃棄物発電の利点
発電後の排熱の利用価値が高く、コジェネレーションシステムに利用可能。
(2) 廃棄物発電の問題点
エネルギーの供給が不安定。ゴミの処理量に左右される。
発電効率が低い(20%以下)。
燃焼時に二酸化炭素、ダイオキシンを発生する。
廃棄物処理施設の建設が住民の反対にあう。
(3) 廃棄物発電の現状
スーパーゴミ発電(ガスタービンリパワーリング複合発電)
ゴミ焼却炉のボイラーから出る蒸気を、ガスタービンの排熱で加熱して、発電効率を高めた複合型ごみ発電。
群馬県高浜発電所では1日450tのゴミを燃焼することにより25MWで発電し、発電効率34.3%を実現している。
北九州市皇后崎工場のスーパーゴミ発電では36MW(蒸気タービン29MW+ガスタービン7MW)、発電効率26%となっている。
RDF発電
ゴミから不燃物・水分を抜きペレット状にしたRDF(ゴミ固形燃料)を燃焼させる。燃焼性が良いので高効率化が可能である。
RDFは運搬・保存しやすく、広域的なごみ処理ができる。
大牟田リサイクル発電所では。1日315tのRDFを燃焼することにより20.6MWで発電し、発電効率30%を実現している。
ただし、三重県桑名市でのプラント事故のように、ガス引火による火災の危険があるので、管理には注意を要する。
(4) 廃棄物発電の将来
高効率発電・ダイオキシンの抑制に関する研究
廃棄物を直接燃焼させない、大型ガス化溶融炉を開発することにより、850℃以上の高温で燃焼し、高効率で発電され、ダイオキシンの発生が抑制される。
10. 地熱発電
地熱発電では、地中の地熱流体(過熱蒸気・熱水)をエネルギー源として、タービンで発電する。火山国の日本では、将来的に期待できる発電方式である。既存の発電所は、東北・九州に集中している
(1) 地熱発電の利点
環境負荷が少ない。
エネルギー源がクリーンで無尽蔵に存在する。
(2) 地熱発電の問題点
広大な敷地が必要。
利用に適した場所が国立公園内に多い。
発電量当たりの建設費が高い。
(3) 地熱発電の現状
メガワットクラスの出力も実現している。
福島県柳津西山地熱発電所の出力は65MW
大分県八丁原発電所では2機の出力で110MW
(4) 地熱発電の将来
高温岩体発電への期待
同じ表面積で地熱発電の10倍のエネルギーが得られると考えられ、38GW以上の資源量が国内で利用可能と見られている。
11. 小水力・マイクロ水力発電
大規模水力発電は、ダム建設に費用と時間がかかり、立地にも制約を受け、河川環境へ与える影響も大きいので、建設用地を確保することは難しい。だが、技術的にすでに成熟しているので、分散型電源として、小水力発電(1MW以下)・マイクロ水力発電(100kW以下)へ応用される。
(1) 小水力発電の利点
環境負荷が少ない。
エネルギー変換効率が高い。
出力変動が小さい。
年間を通じて、変動の少ない出力が確保できる。年間5000〜7000時間稼働。
⇔太陽光・風力は1000〜1800時間(設備稼働率10〜20%)。
消費者直近の水流を確保できる場所へ設置でき、分散型電源に適する。
耐用年数が長い。
(2) 小水力発電の問題点
分散型電源全般に言えるが、発電量当たりの設備費が高く、発電コストが高い。
設置場所が限定される。
工業用水・工場排水・下水・上下水処理場など、落差と安定した流量を確保できる場所が必要。農業用水は、灌漑期と非灌漑期で流量に差が出る。
(3) 小水力発電の現状
マイクロ水車は、ごく小さな規模での利用にとどまっている。
山間部での非常用電源、夜間照明、補助電源など。
サイフォン式水車(8.9kW)
長野県大町市などの、落差のほとんどない農業用水路などで導入されている。土木工事の必要もない。
(4) 小水力発電の将来
ハイドロバレー計画
自家消費型の小水力発電所を建設し、地域の産業の活性化を図る。
インライン型水力発電
オーダーメイド水車ではなく、水道の配管に取り付ける形式にすることにより、汎用性を持たせ、量産によるコストダウンが期待できる。
12. 分散エネルギーネットワークシステム(マイクログリッド)
新エネルギーによる発電は、従来の系統電力に依存しない、分散型電源として利用される。そして、需要地と近接設置し、送電損失の低減、緊急時の自立型システムとして期待される。また、真夏の昼間など重負荷時の負荷平準化にも役立つ。
しかし、電力品質(周波数・電圧・安定)に劣る新エネルギーを有効利用するためには、電力供給安定化が必要となる。特に、風力発電と太陽光発電は出力が不安定なため、電圧・周波数変動の抑制が必要である。
そこで複数の分散型電源を組み合わせてネットワークを構築することにより、需給バランスをマッチングさせる。同時にコストも改善される。
青森県八戸市ではマイクログリッドの実証試験が行われている。
電力貯蔵装置:出力変動を平滑化する。電力供給を安定に制御することができれば、系統からの独立運転も可能となる。
@ 電気二重層キャパシタ方式
A バッテリ方式(NAS電池・RF電池等)
B 超高速フライホイール方式
系統連係:分散型電源の電力の不足分を系統から供給する・余剰分を系統へ供給する。